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翌朝(聖&爽×葵)5

「でも、真面目な話、もっと欲張りになってほしいっす」 布団に潜ったままの葵を抱き寄せて告げる爽の声音にはさっきまでの茶化すようなニュアンスは込められていない。 「もっとって?もう十分……」 「例えば毎日会いたい、とか葵さんからも言ってほしいな。今のペースで葵さんが満足なら仕方ないっすけど」 爽は少し遠回りな言い方をしたが、葵はどんな結論を望まれているか分かっていた。すれ違う生活が続くならいっそ一緒の家で暮らしたいと、以前から二人にアプローチされているのだ。 二人の望みを叶えたくないわけではない。葵だって二人と過ごす時間を増やすにはそれが一番の方法であることも理解している。実際、先程聖を見送ってやった時にもこれが日常になればいいと葵自身も望んでしまった。けれど、即答できない理由がいくつもある。 「葵さんが悩んでることは大体想像はつくけど。そういうのも含めて何でも話してください。もっと頼って」 爽はあくまで葵の意思を尊重するように告げると、優しく髪を梳いてくれた。彼等は我儘だけれど肝心な所では引き際を心得ている。 「葵さんがいっぱいいっぱいなのは分かってるから大丈夫ですよ」 甘えるように縋れば、爽はきちんと抱き締めかえしてくれる。ようやく彼らとの恋にも慣れ始めてきたが、まだ二人分の愛情を受け止めきるには自分が幼すぎる自覚はあった。葵のペースを乱すばかりのようで、きちんと歩調を加減してくれるところに双子の器用さを実感させられる。 しばらく彼の腕の中でジッとしていると堪えていたはずの眠気がまたじわじわと体を包み出す。 「爽くんも仕事だよね?」 「仕事っていうか今日は午後からスタジオがあるだけ。だから一緒に二度寝しましょっか」 爽も聖のように葵が眠っている間に出て行こうとしてしまうかもしれない。それが怖かったが、爽は葵を安心させるように眠りに誘おうとしてくる。 「今日も葵さん、家で待っててくれるんでしょ?」 「聞こえてた?」 聖との会話が筒抜けだったのかと問うと、爽は枕元に置いた携帯の画面を見せてきた。そこには聖からのメッセージが表示されている。 葵がもう一日泊まることになったと伝える文章と共に聖がよく使うキャラクターのスタンプが並んでいた。ハートマークがいっぱいに浮かんだイラストは、聖がよほど嬉しかったのだと伝えるには十分な説得力があった。今すぐ抱き締めたいほど愛しい気持ちが溢れてくる。 「夜はまた三人で寝ましょうね」 爽の言葉だけで胸が一杯に満たされる。こんな生活が毎日続くなら……。葵は爽の腕の中で目を瞑りながら、二人の願いを叶えたいその後の生活を思い描き始めた。 実現するのはきっとそう遠くない未来の話。

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