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翌朝(京介×葵)3

普段は家族団らんの時を過ごすリビング、それも朝日が差し込む時間に京介と体を合わせるのはどうしても背徳感が勝ってしまう。家族がいる時に部屋に籠もってキスを交わす時とはまた別の気まずさが湧き上がる。 だが繰り返し舌を絡ませられるとダメだと思う気持ちが段々蕩けてしまう。直接的に葵の弱い部分に触れられているわけではないのに、肌を擦られるだけでゾクゾクと背筋が震える。 「……あぁ、ヤバイ。マジで止まんなくなりそ」 葵が身を委ねる覚悟をしかけた時、今度は京介が不意に体を離してそう言った。苦しげに眉間にシワを寄せ一度深呼吸をすると、葵のシャツを元通りに戻してさえくれる。 「いつまで兄貴食い止められるか分かんねぇしな」 「お兄ちゃんを?どういうこと?」 「この時間作るためにどんだけ苦労してると思ってんだよ、バカ」 京介の言い分は葵には理解しがたいものだったが、振り返れば確かに違和感はあった。 両親の旅行が決まった時には残った兄弟三人でどこか出掛けたいと張り切っていたというのに、急に兄まで泊りがけの用事が出来たのはおかしい気がしていたのだ。 「毎週旅行行ってもらわねぇと体がもたねぇ。葵の声も聞きてぇし」 溜息と共にもたらされた愚痴は何とも返事がしにくい。 家族がいる状態では葵が必死にタオルを噛んで声を我慢しているからか、その反動で昨夜は思いきり鳴かされた。恥ずかしさに手で口元を押さえようとしても一切許してもらえなかった。 「……もしかして京ちゃんがお父さん達に旅行勧めてるの?」 「親孝行だよ、ただの」 しれっと言い返す京介の表情はどこか悪戯っぽい。十年以上片想いをさせた分覚悟しろと付き合いたての頃に宣言はされたが、どうやら彼の欲望を侮っていたようだ。 とはいえ、葵だって言い分はある。幼い頃からおまじないと称して淫らな行為を仕掛けてきたことは怒っても良いのではないかと、今なら思うのだ。彼の想いに応えられなかった代償はすでに十分払っている気がする。しかしそれでも足りないというのなら、仕方がない。 「……京ちゃん」 直接誘うことは出来ない。葵から名を呼んで京介の首元に手を回すことが精一杯だ。 「なんだよ、せっかく止めてやったのに」 いつもの少し意地悪な物言いだが、表情は緩んでいる。おまけにスウェットのポケットから、枕元に置いていたものと同じパッケージが色違いで三つも取り出されたのが見えてしまう。もしかしなくても初めからどこかで手を出すつもりだったようだ。 「ま、待って、そんな無理」 後悔してももう遅い。ソファに押し倒してくる彼を突っぱねても止まってくれることはなかった。それどころか、せっかくだからとエプロンを着せようとまでしてくる始末。 この調子では朝食は作ってあげられないかもしれない。欲深い恋人に愛されながら、葵の頭をそんな現実的な心配が過っていった。

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