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翌朝(櫻×葵)2

まだ当分目覚めないだろう。そんな葵の予想に反し、ベッドの上で櫻は少し身を起こし、出迎えてくれた。 「ごめんなさい、起こしちゃいました?」 「起こしたかったんでしょ?」 物音を立てたせいで彼の眠りを妨げてしまった。そう感じて素直に謝罪を口にしたが、櫻は意地悪な顔をして切り替えしてくる。彼の体を気遣いたいと思う反面、早く起きて構ってほしいと思っていたのも確かに本音だ。 「寂しかったんだ?」 当たり前のことだし、昨晩すでに散々言わされた。改めて聞いてくるなんてやはり彼は葵を苛めるのが好きだ。でも葵が素直に頷けば彼は"僕も"と言って優しいキスを落としてくれる。そこも出会った頃とは変化した部分かもしれない。 櫻は葵を膝の上に招いてから、淹れたてのセイロンティーを口に運んだ。その動作もまた見惚れるぐらいに美しい。 「無茶してごめんね。さすがに今回は長くてセーブ出来なかった。痛いでしょ」 櫻はそう言って葵の髪に触れていた手を背中まで滑らせ、そして腰から臀部に掛けて撫でる仕草をしてみせた。葵が腰を庇いながら動いていたことなどお見通しだったようだ。 櫻は自分の欲を吐き出す行為には淡白なほうだとよく言っている。確かにベッドに居る時間の割に、体を繋げている時間は長くはない。それすら葵を苛めて泣かせるための手段の一つという感が強い。でも昨晩は違った。 抱かれること自体にそこまで慣れていない上に、一ヶ月ぶりとあれば体に負担が掛かるのも無理はないかもしれない。でも決して嫌ではなかった。むしろ珍しく余裕のない彼を見て愛されていることを改めて実感もしてしまった。 「……嬉しかった、です」 葵から櫻に抱きついて正直に気持ちを打ち明ければ、彼は驚いたように眉を上げた。 「いつからこんなエッチな子になっちゃったんだろうね?」 間違いなく櫻のせいだ。でもここで口答えしたらそのまま押し倒されるのが目に見えている。葵はただ彼の胸に頬を預け、視線を逸らせてみせた。 「それは誘ってるってことでいいのかな」 「……え、ちがいます」 「ん?じゃあ嫌なの?」 櫻の手には紅茶の代わりにいつのまにか昨夜の名残のカフスが握られていた。葵がベッドに残していったものを回収したのだろう。 櫻は葵を苛めるといっても、乱暴なことをしたがるわけではない。むしろ葵が痛がったり、肌に傷が残るような行為は櫻のほうが嫌がるぐらいだ。にも関わらず、櫻がそうして葵を物理的に捕まえておきたがる理由は葵も理解している。だから葵も拒みはしない。 恐る恐る両手を差し出せば、櫻は満足そうに微笑んでカフスを嵌め、そしてそれ同士をリボンでくくってしまう。 「なんで着替えちゃったの?許可した覚えないけど」 「紅茶、淹れたくて」 「着替えなくてもできるよね、そんなこと」 葵が羽織っていたシャツのボタンを一つ一つ外しながら、櫻はすっかり夜のモードに入りだしてしまった。でも外は朝日が昇っているし、葵としては彼との会話も楽しみたい。話題を変えるために先程見つけたものを口にしてみた。

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