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翌朝(幸樹×葵)※未来編

幼い頃から何かを抱き締めながら眠らないと落ち着かなかったけれど、今では歴代の相棒であるぬいぐるみ達の出番は全くない。頭一つ分は優に大きな恋人。彼の腕の中で眠ること以上に安心出来るものがないからだ。 「……んー?あおちゃん、おはよ」 「おはようございます、幸樹さん」 大きな欠伸をしながらも、幸樹は葵をしっかりと抱き直してくれる。彼が眠る時に絶対に葵を離さないのも、一人きりにしないのも、高校時代の思い出のせいだと思うと切なくなるが、そのおかげで彼との絆が深まったのだと今は前向きに捉えられるようになった。 基本夜型だという幸樹だが、葵がこうして泊まりに来るときには葵に合わせた生活を送ってくれようとする。だがやはり朝は苦手らしい。眠そうに目を擦り、欠伸を繰り返すだけで一向に起き上がる気配を見せない。 「コーヒー淹れてきましょうか?それとも、もう少し寝ますか?」 特別予定があるわけではないから、急いで起きなくてもいい。彼の短く揃った金髪を撫でて眠りを促してみるが、彼は葵の提案を断った。 「あおちゃん、おはようのチューは?いつしてくれんの?」 まるでそれが無いから起きられないと言わんばかりの口調だった。茶色の瞳はばっちり開いているように見えるが、多分指摘したところで無駄だろう。 彼の肩に手を掛けそっと唇を近づければ、迎え入れるように彼からも距離を縮めてきた。二人を覆うタオルケットの衣擦れと、短く重なり合うキスの音が響くと、昨晩の情景と重なって体が自然と熱くなる。 「あぁ幸せやな。多分今世界一幸せな気ぃするわ」 「……そんな、大袈裟な」 「そ?でもほんまに思うから」 照れくさくてつい彼の発言を諌めてしまうが、彼は気にする素振りもなくニカッと笑ってくる。 葵をいつでも明るい場所に連れ出してくれる太陽みたいな人。彼の傍に恋人として居ることを選んだ時も、そして二人で居る時もいつでも、彼は葵と居て幸せだと言葉に出して告げてくれる。 「僕も、です」 勇気を出して本音を打ち明ければ、彼は更に笑顔を深めて葵を抱き締めてきた。短い金髪がチクチクと頬を掠めるのすら、温かな気持ちになるのが不思議だ。 「僕も幸樹さんくらいの長さにしようかな」 今まで何度か髪を短く切ろうかと悩んだことはあったが、その度に周囲から"絶対に似合わない"と言い切られ上手くいかなかったのだ。でも幸樹はきっと止めない気がした。 「ええんちゃう?これから暑くなるし、大分涼しいで」 予想通り、葵がどんな見た目になっても幸樹は大して興味はなさそうだ。だが、彼は葵の項をさすりながら何故か欲を滲ませた顔をしてくる。

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