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翌朝(幸樹×葵)2

「皆にあおちゃんがお兄さんのだってバレバレになるけどな?」 「……どういうことですか?」 幸樹の言葉の意味が分からず尋ね返すと、彼は葵の腰を強く引き寄せて首筋にキスを落としてくる。 「バックで挿れる時あおちゃんのここな、汗かいて髪が張り付いてんねん。それ掻き分けて噛むの、めっちゃ興奮する」 真面目に聞かなければよかった。そう後悔する気持ちになるのに時間は必要なかった。 「せやからここ歯型とキスマークだらけやで。知らんかった?」 普段目に入らない場所だから意識したことがなかった。いつも彼のモノを飲み込むのに必死で他のことに気が回らなかったのもいけない。もしかしたら誰かにこの場所を見られてしまっただろうか。風が吹けば簡単に晒される項なら十分に有り得る。 「髪短なったら噛みやすくなるなぁ」 「……やっぱり、切りません」 「そ?残念」 その場所にキスし続ける幸樹から逃れようとしても、体格差のせいでちっとも敵わない。 「向かい合って挿れる時はあおちゃん、身体反らすやん?ここ剥き出しになるからむしゃぶりつきたくなんねん」 次に幸樹が狙ったのは葵の喉元だった。柔い部分を甘噛みしてくる彼の目はすっかり肉食獣のそれになっている。 「どないしよ。このまんまお兄さんとまたぐちゃぐちゃになる?」 「だ、め…です」 体力と性欲が有り余っていてどうしようもなくエッチで困った恋人だ。彼が満足するまで付き合ってあげられないことには罪悪感はあるものの、ごく健全なはずの雑談がいつのまにかこうしたテーマに切り替わってしまうのには毎回苦労させられる。 「昨日シたのに恥ずかしいん?」 「……もう、いっぱいシたから、ダメなんです」 今再びキスをされてしまったらそのままなし崩しに始まるのは目に見えている。迫ってくる幸樹の唇を押し返しながら必死に説得を試みた。 「いっぱい?あおちゃんのいっぱいて何回?」 「何回って……分かんない、です」 「あおちゃんは、そらもういーっぱいイッちゃったもんな?で、お兄さんは?お兄さんのことももっと天国イカせてほしいねん」 いつもは優しく薄められる茶色の瞳が、今は少し意地悪な色をしている。距離を離そうとする葵の手の平をペロリと舐め上げる仕草は、ひどくいやらしい。 「朝のエッチは嫌がるな、ほんまに。なんでなん?」 「だって、明るいから」 「あおちゃんが知らんとこまで、お兄さんはとことん知り尽くしてんのに?」 太腿やその上の部分もさわさわと撫でてくる幸樹は本気で葵を責める顔はしていない。ただ恥ずかしがる葵を面白がっている素振りだ。 「ウブなんはかわええけど、もうちょい楽しめるようになろうな。お兄さん、まだまだあおちゃんとシたいことばっかあんねん」 「……したいこと、ですか?」 この話の流れではロクな願望ではないはず。分かりきっているのにどうして聞き返してしまったのか、葵は自分を咎めたくなる。 「んー、例えば青姦とか?」 「あお、かん?」 「お外でエッチすんの。楽しそうやろ?」 聞かなければよかったとすぐに後悔する。やはりロクな願望ではない。ベッドの上ですら彼に服を脱がされるのは緊張するのに、外で、なんて絶対に御免だ。でも葵のペースに合わせてくれる彼の気持ちを少しでも満たせるなら。そんな思いが全く無いわけでもない。

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