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第9回人気投票お礼(京介×葵)1
※サイトで行なっていた人気投票のお礼としてアップしているSSです。
※葵高1冬のお話
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朝見たテレビでは夕方から降水確率が上がると言っていた。その予報を気にして時折窓の外へ視線を向けていた京介は、灰色の空から雨粒が溢れ始めたことにすぐに気が付いた。時計を見れば予報よりも少し早い時刻。悩んだ末、京介は財布と携帯、そしてジャケットだけを手に取り自室を出た。
「あら、出掛けるの?降り出したわよ」
スニーカーの紐を結んでいると、気配を察した母、紗耶香がリビングから顔を出してきた。わざわざ雨が降りだしたタイミングで家を出ようとする京介に不思議そうな視線を送ってくる。だが、京介が口を開く前に紗耶香はおかしそうに笑いだした。
「あぁ、葵ちゃんのお迎え?折りたたみ傘持って行ったから大丈夫よ」
「……別に。買い物行くだけだよ」
「はいはい、じゃあ”偶然”葵ちゃんに会ったら一緒に帰ってきなさいね」
完全に見透かされている上に、言い訳まで代弁されてはそれ以上言い返す術がない。京介はただ舌打ちをして紗耶香に背を向けた。
温かな室内で寛いでいた体には冷えた外気が染みる。ジャケットのチャックをきっちりと閉めても気休めにしかならない。
葵が朝から出掛けた先は遥の父親、譲二が経営する洋菓子店。長期休み中しかバイトをしない約束だったが、今はバレンタインに向けての繁忙期。手伝って欲しいと声が掛かったのだ。行きは遥が迎えに来たが、帰りは葵一人の予定だ。暗くなる前に帰らせると遥は言っていたし、本人もその気でいたが、京介は気掛かりだった。
雨の日は葵の気が沈みがちだ。小さい頃からそうだった。成長するにつれて取り乱すことはなくなったが、それでも雨空を見上げて心細そうな顔をするのは変わらない。
だから葵の気を逸らしてやれたらと、そう思うのだ。
譲二の店に着くと、雨にも関わらず外にまで列が伸びるほど繁盛している様子が窺える。さすがに女性ばかりの列に加わる気にはなれず、京介は斜向いの本屋から葵のバイトが終わるまでの時間を潰すことにした。
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