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買い物
ココside
昨日の話は夢じゃなかった。
本当にハルは休みで、カレー作る気満々で、遅めの朝食を食べてから10時くらいに近くのスーパーへ歩いて買い物に出かけた。
ただ歩くだけ、ハルと一緒にいるだけで楽しいと思える。
いつもはビクビクしてしまうけれど、本当はハルと一緒にいるのは好きだ。
オレにとっては全部が新鮮で、初めての事ばかりで何もかもキラキラして見える。
「あの赤い看板のところが、いつも大学の帰りに寄るスーパーだ。そのうち、ココにもお使いに行ってもらおうかな」
「い、行くっ。これもハルのお手伝いになる?」
「もちろん。その分早く帰って来られるし、早くココに会える。大助かりだよ」
臆面もなく微笑みながら告げられた言葉に、胸が熱くなる。
「……ほんとにそう思うの?」
「何がだ?」
「ほ、ほんとに早くオレに会いたいって思うの?」
「ん?当たり前だろ?出かけた後はいつもお前のことばかり考えてるよ。
だから、早く会ってちゃんと無事に一日過ごせていたか確認したくなる」
「それは……それは、どうしてなの?」
「なんでだろうなぁ~。放っておけないからかな。それに一緒にいると心が落ち着く…。初めて会った時も怪しいヤツだとは思ったけど、不思議と恐怖や不快感はなかったからな」
「………ふぅん」
「というか、初めてちゃんと会話してくれたな。ココからいっぱい話しかけてくれた。嬉しいよ」
そう言って、ハルは優しく頭を撫でてくれた。
温かくて大きな手の重みが心地よかった。
もし、オレがハルやあの環境に慣れることが出来たら、いっぱい頭を撫でてくれるのかな?
「さ、スーパー見えて来たぞー」
「……ここがすぅぱぁ…」
入り口でその大きなな建物を見上げてから中に入った。
スーパーではオレがカートを押してハルの後ろをついて行った。
「嫌いな食べ物ないよな。俺が出した料理は一通り食べれたもんな?」
「……うん、ハルのなら食べれる――美味しいから」
「それ、すげー嬉しい」
にっとオレに笑顔で振り向いてくれて、思わずドキッとしてしまった。
好きとかそういう感情はよく分からないけれど、きっとそれじゃない。
ただ、ハルがかっこよすぎて自然に頬が熱くなったり、心臓が跳ねてしまうのだ。
たった今も顔が火照って、そのうち血液が沸騰してしまうんじゃないかと思った。
ハルが前を向いてくれていて良かった…。
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