20 / 83

買い物

ココside 昨日の話は夢じゃなかった。 本当にハルは休みで、カレー作る気満々で、遅めの朝食を食べてから10時くらいに近くのスーパーへ歩いて買い物に出かけた。 ただ歩くだけ、ハルと一緒にいるだけで楽しいと思える。 いつもはビクビクしてしまうけれど、本当はハルと一緒にいるのは好きだ。 オレにとっては全部が新鮮で、初めての事ばかりで何もかもキラキラして見える。 「あの赤い看板のところが、いつも大学の帰りに寄るスーパーだ。そのうち、ココにもお使いに行ってもらおうかな」 「い、行くっ。これもハルのお手伝いになる?」 「もちろん。その分早く帰って来られるし、早くココに会える。大助かりだよ」 臆面もなく微笑みながら告げられた言葉に、胸が熱くなる。 「……ほんとにそう思うの?」 「何がだ?」 「ほ、ほんとに早くオレに会いたいって思うの?」 「ん?当たり前だろ?出かけた後はいつもお前のことばかり考えてるよ。 だから、早く会ってちゃんと無事に一日過ごせていたか確認したくなる」 「それは……それは、どうしてなの?」 「なんでだろうなぁ~。放っておけないからかな。それに一緒にいると心が落ち着く…。初めて会った時も怪しいヤツだとは思ったけど、不思議と恐怖や不快感はなかったからな」 「………ふぅん」 「というか、初めてちゃんと会話してくれたな。ココからいっぱい話しかけてくれた。嬉しいよ」 そう言って、ハルは優しく頭を撫でてくれた。 温かくて大きな手の重みが心地よかった。 もし、オレがハルやあの環境に慣れることが出来たら、いっぱい頭を撫でてくれるのかな? 「さ、スーパー見えて来たぞー」 「……ここがすぅぱぁ…」 入り口でその大きなな建物を見上げてから中に入った。 スーパーではオレがカートを押してハルの後ろをついて行った。 「嫌いな食べ物ないよな。俺が出した料理は一通り食べれたもんな?」 「……うん、ハルのなら食べれる――美味しいから」 「それ、すげー嬉しい」 にっとオレに笑顔で振り向いてくれて、思わずドキッとしてしまった。 好きとかそういう感情はよく分からないけれど、きっとそれじゃない。 ただ、ハルがかっこよすぎて自然に頬が熱くなったり、心臓が跳ねてしまうのだ。 たった今も顔が火照って、そのうち血液が沸騰してしまうんじゃないかと思った。 ハルが前を向いてくれていて良かった…。

ともだちにシェアしよう!