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なぜか腹が立った

遙side 「うんっ、ハルのなら食べれるっ」 って大きく頷いてくれたココ。 それを聞いて、照れくささと嬉しさが混ざって心の中が大騒ぎした。 勝手に頬が緩みそうになって慌てて奥歯を噛み締める。 スーパーが初めてらしいココに、野菜の正しい見分け方を説明しながら一周した。 「ハル、これなに?」 「それはポテトチップスだよ。まさか食べたことないのか?」 「う、うん…」 「じゃあ、今日の3時のおやつに食べればいい。クセになる味だから気をつけろよ~?」 なんておどけた口調で言いながら、ココが指をさした袋をかごの中に入れた。 ココと会話をする度に、ココがいかに世間を知らないかが浮き彫りになってくる。 まるで、ずっと鳥かごの中に閉じ込められていた鳥のように感じる時が多々あった。 「よし、これで買い出しは終わりだな」 「うん」 一通り買い終えたので帰ろうとした時に、ちょうど大我と大輝に出くわした。 赤と青の長身をそこらでお目にかかれるわけが無いので、反射的に大我と大輝だと思った。 「あ!遙やん!」 真っ先に気付いたのは大我だった。 「あ、ほんとだ。遙だ」 俺はふたりに黙って手を挙げた。 俺の隣りにいる見知らぬヤツがいると気がつくと、大我が興味津々の目で駆け寄ってきた。 「よっ!遙。なーなー、遙その子どうしたん?」 「あ…えと、俺の連れ?」 「一緒に暮らしとん?名前は何てゆん?」 大きい赤がココに話しかけんな。怖がんだろ。 と心の中で文句を言いながら、大我の目を見る。 「ココ…一緒にくらしてる…」 後ろに隠れて俺のシャツを握り締めながら、小さな声で答えるその仕草にドキッとした。 俺に甘えるようなそぶりを一切見せなかったココが、今は俺の近くが一番安全だと判断し、 この大きな赤と青のヤツから逃げようとしているのだ。 急にこんな行動をされると誰だって嬉しくなる。 「えらい可愛い子やなぁ!!遙にやさしーしてもうてるか?」 馴れ馴れしく、よしよしと頭を撫でる大我。 ココはそれに目を細めているし、首のあたりを撫でられて嬉しそうに微笑んでいる。 なぜかそれにものすごく腹が立った。 「遙が嫌なら俺らのところにやさしぃしたるからなー?」 俺のことは無視してふたりだけで喋るし、その間もベタベタ触りまくるし。 不快感しか募らなかった。 なぜこんなにムカムカするのか分からない。 けれど、ココに馴れ馴れしく触っているのが気に入らなくて気分が悪いのだけは理解できた。 「ココは俺ん家の子だから心配しなくても俺がちゃんと面倒見るし!絶対お前らんとこなんか行かさねーし!!お前にもやんねーよっ!!」 器の小さいヤツだと思われても構わない。 けれども、ココが俺よりも大我や大輝に心を開くということが許せなかった。 そして、いつの間にか俺はブチ切れていて、気がつくとココの手を引っ張ってずんずんと歩いてもと来た道を帰っていた。

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