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怒りの理由
ココside
あのままハルに手を引かれて息を切らして帰って来た。
玄関には、無造作に置かれた買い物袋からは玉ねぎやにんじんが落ちて床に転がっている。
とてもカレーを作ろうという雰囲気ではなかった。
「ちょ、っと…はぁっ、はぁっ…ハルどうしたの」
息を切らして膝に手を置いて呼吸をする背中に語りかける。
「……っ」
「なんでそんな怒ってるの…?オレ悪いことした……?」
悪いことをしたなら謝らなくちゃ。
ハルには絶対に嫌われたくない、そう思った。
少しの沈黙が二人の空気を余計に重くさせて、ハルの後ろ姿を見ているだけで怖かった。
「言ってくれないとオレ、分かんないよ…また何かしちゃう………」
泣きそうになりながら、もう一度話しかけるとハルがやっと口を開いた。
「じゃぁ、訊くけど…お前何で今さっき大我にあんなに触らせたんだよ」
こちらを振り向かないまま、低い声だけが重たく響く。
いつもより低くて心臓が凍りつきそうな冷たい声音だった。
「え……?」
最初何のことを言っているのか全く分からなかった。
触らせる?何のこと?どこでの話?
パニックになって頭が回らない。
今はハルが怖くて仕方がなくて、鼻がツンと痛んだけれど、奥歯をぐっと噛み締めてから口を開いた。
「な、何のこと?」
「シラ切るなよ。今さっき大我に撫でられて嬉しそうに笑ってたじゃねぇか…っ」
何のことを言っているのかやっと分かった。
初対面のタイガっていう人にいっぱい触らせたから怒ってたんだ。
理由は分かったけれど、それに対して怒っているとは思わなくて戸惑いが隠せない。
あんなに優しいハルが、どうしてそんなことで怒ってしまったのか不思議だった。
「俺にはそんな撫でたことねぇし。第一、一緒にいてそんなふうに嬉しそうな顔も見せたことねぇのに…」
振り向いた時に見えたハルの顔は、初めて見る表情をしていた。
ハルはどうしてそんなに寂しそうな顔をしているの?
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