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遙side 「なんでそんな怒ってるの…?オレ悪いことした……?」 何で俺はこんなにも怒っているんだ。と こっちが聞きたいくらいなのに、そんなこと聞かれても分からない。 あの時、ココに触っていいのは俺だけだと思った。 なぜか大我がココに馴れ馴れしく触るのが許せなかった。 今も心の中がまるでマグマのようにドロドロして胸が苦しい。 俺にはあんな嬉しそうに笑う姿は見せなかったのに、大我にはココは目を細めて笑ったのだ。 俺がずっと望んでいた表情を大我は簡単に引き出したという、その事実とその光景を思い出すと余計に酷く心を乱した。 でも、単にそれは嫉妬だと思う。 嫉妬?―― なぜだ? 俺が? ココに? そんなわけがない。ココはただの同居人だ。 それ以上でもそれ以下でもないはずだ。 「言ってくれないとオレ、分かんないよ…また何かしちゃう………」 今はその無自覚で何の罪もない、弱々しく俺の背中に語りかけるココにさえも嫌な思いしかなかった。 「じゃぁ、訊くけど…お前何で今さっき大我にあんなに触らせたんだよ」 いつの間にか俺はココを壁際まで追いやっていた。 せっかくここまで築いた関係もイチから積み直しだ。 その前に、ココが怯えて出ていく方が先か―― そんなことを考えながらココに詰め寄る。 「なんで?俺にはビクビクしたりするくせに、初対面の大我には懐くんだな。そんなに俺のこと嫌いか?」 「ち……がっ」 俺はまだココの笑った顔見たことねぇのに…… 俺はただ優越感に浸りたかっただけなのか? ただ、俺を必要としてくれるヤツがいればよかったのか? 俺はココに頼られている気になっていて、本当はココに甘えてただけなのかもしれない。 と感情的な俺の中に冷静な俺が自分自身を分析する。 自分の言葉にもムカついて頭が爆発しそう―― 「俺よりアイツに飼われたいの」 「ち…ちがう……っ!」 突然ココが、俺の服を握りしめながら大きく首を振って否定した。 「ちがっ、ちがう……っ」 「……オレは人が怖い。オレは捨て子で、小さい時からわけの分からない所に入れられてた。生きるために何でもやって…色々あってそこ抜け出して… オレの正体知った人はみんな…っ、みんな酷いこと……でも、ハルは嫌わずにいてくれた……ペットの代わりでも、死んだネコの代わりでも、何でもいいから必要としてくれるなら…と思って……ぐずっ、 オレに名前をくれて、うちの子って言ってくれた……いっぱい優しくしてくれたっ」 「ココ……お前…」 その時、ココが泣いているのを見て我に返った。 「そんな人オレ初めてだったから……あり、がと…っ、ずっとお礼が言いたかったんだ」 涙を零しながら俺を見つめ笑ってくれた。 俺に見せた初めての笑顔がそれだった。

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