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好きになってもいいですか

遙side 観覧車はとうとう地上に戻ってきた。 先にゴンドラを降り、中にいるココに手を差し伸べる。 「クリスマスツリー、見に行くか」 「うん」 大きく頷いてから、恥ずかしそうに俺の手を握った。 たくさんのカップルが、ツリーの元へ集まってきている。 「すごい人…あんなに遠くにあるのにツリー見える」 「世界一大きなツリーらしいからな。もっと近くで見よう」 俺は、昔に親父から教えて貰った穴場の場所を目指した。 「ねぇねぇ、どこ行くの?」 「クリスマスツリーを独り占め出来るばーしょ」 「ほんと?」 「昔、親父に教えて貰ったとっておきの所だよ」 確かここら辺に建物があったはず…。 ツリーの近くにある建物の階段を上るとその光景はある。 階段を上り三階の屋上へ上がる。 「さぁ、ココ目を閉じてそのままゆっくり前に進むんだ」 「んっ……」 ぎゅっと目を瞑ったココの手を引く。 「目を開けていいぞ」 その言葉を聞いてココが目を開く。 「うわぁ〜っ!すごいっ」 目をキラキラさせて、柵に足をかけ身を乗り出す。 何組かのカップルがツリーを背に写真を撮ってるが、落ち着いて話すのに最適な場所だった。 「落ちるなよ。危ないぞー」 「オレ、クリスマスツリー初めて見た…。こんなにキレイなんだね…」 今にも泣きそうな顔で俺の腰に抱きついてきた。 一瞬ドキッしたが平然を装いつつ、そっとココの背中に手を回し、声をかける。 「…どうした?」 「すごく嬉しくて…。プレゼントくれたのハルが初めてだったから。 それに、こんな素敵な所にも来たことなくて…」 「俺だって、自分からこんな事するの初めてだった…」 「ほ、ほんと?」 目を丸くしてココが見上げる。 「お前の他に、デートしたくなるヤツなんかいねぇからな…」 「ねぇ、そ…それって……どういうこと?」 「その……お前が好きだってこと。どこへも行かないで、ずっと一緒にいて欲しい」 そう囁くと、途端に顔を真っ赤にして今にも湯気が出そうな勢いだった。 「好きになってもいいですか…?」 顔を覗き込んで恭しく訊ねた。 「……はいっ」 そう返事を返し、恥ずかしそうに微笑んだ。 お互いの顔が近づき、その意図を悟ったココはゆっくりと目を閉じる。 俺はそのまま、左手でそっと頬を包んで、唇を優しく重ねた。 どうしてこんなに触れたくなってしまうのだろう。 こんなにもキスが甘く感じて、ずっと味わっていたくなる。 それはきっと―― 俺が初めて口付けたあの日、その味、匂い、触れた時の感触を知ってしまったからだろう。

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