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鬼嫁降臨
ココside
「え…っと、えっちなことは…ちょっとだけ…」
「えっちなことってどんな事?」
「え、それ言わす、の?」
あたふたしていると、上からハルの声がした。
「おーい、未成年に何吹き込んでやがるんだ?」
「は、ハル…あの、えと!」
誤魔化そうとしどろもどろになる。
もう…やだ。
今すぐ穴掘って隠れたい。
「お前が手を出してないか事情聴取だよ」
「タツ…っ」
「俺のことは辰にぃでいいから」
また、頭を撫でられる。
ハルとは違う匂いがするけど、本当にハルに撫でられてるように安心する。
「なに馴れ馴れしくしちゃってんだよ兄貴。ココは俺のなんですけど」
「この人がハルのお兄ちゃん…」
美味しそうな料理を手に持ち、わざとらしく不機嫌な顔をして仁王立ちしていた。
「ココって、ほんと可愛いよな!さっきからそれしか言ってねーけど!」
ハルのことは気にせず、無邪気に笑ってみせる。
「そんなこと言うと碧ちゃんが怒るぞ」
言った先から、碧という人が本当に嫌そうな顔をしてハルの後からひょっこり顔をみせた。
「たぁ〜つぅ〜きぃ〜?」
可愛らしい声をしているのにゾッとするような怖さがあって、思わず背筋をピンと立てた。
「たつきぃ〜、何してるのかなぁ?」
「今俺のもん取ろうとしてた」
しれっとハルが報告すると、辰にぃの顔が引きつった。
「いや、違う!違う!遙がウソついたんだ!」
手をぶんぶんと振りながら弁解する姿を見るところ、アオイさんのお尻に敷かれているようだ。
「辰樹はデザート抜きにしてあげようか?それとも、今日だけ寝室出禁にしようか?」
「ああっもう…碧怖ぇって〜」
「辰にぃは完全に兄さんの尻の下だね〜」
ダイキがほくそ笑みながら呟く。
「でもベッドの上では俺が上だぜ?」
と誰も訊いていないことを自慢げに話した。
「こっ、こら!変なこと言わないの!もう今日は一緒に寝てあげない!」
「へぇー、このウチも一緒に寝とんやなぁ〜ラブラブぅ〜」
「碧ちゃん墓穴掘った〜」
タイガの言葉に赤面しているアオイさんを面白がって茶化すハル。
五人揃うととても賑やかだった。
オレが入る隙がない程に。
でも、楽しそうにテーブルを囲む姿を見るのは初めてで、それだけでオレは楽しかった。
その中にオレも加われるなんて夢みたいだ。
「ココちゃん、いらっしゃい。大輝の兄の碧です。それでこっちが遙の兄の辰樹!よろしくね?」
掛けてくれる声が優しくてとても嬉しかった。
「ココ、隣おいで」
少し低めのテーブルに料理を置き、その周りに座布団を並べる。
ハルの隣りの座布団をぽんぽんと叩かれちょこんと座った。
「な?怖くないだろ?……碧ちゃんは怖いけど」
そっと耳打ちして来た言葉に二人で笑う。
「ん〜?何か言ったぁ?」
「「っ!!何もない(です)!!」」
アオイさんは優しくて怖い人だった。
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