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恋人・夫婦・パートナー
遙side
「ごめんね?お客さんなのにずっと遙に手伝わせて…」
「いいよ。今年は俺ん家でやる予定をこの家に変更させてくれたんだし。それに、あんなザルに付き合うのも疲れる」
「僕はそんなにお酒飲めないけど、遙はそこそこ酒豪でしょ?」
「あんなヤツらと一緒にされたくない」
呆れながらどんどん食器を洗っていく。
六人中四人がかなりの酒飲みで、今回も結構、酒類を買ってきていたようだ。
「大我が妊娠してたなんて知らなかったから、結構買っちゃったんだけど…大丈夫かな?」
キッチンとリビングは部屋が異なっているのだが、その賑わいようが思いっきり伝わってくる。
近所迷惑にならないといいのだが…。
「それもそうだけど、あんな中にココちゃん置いてきぼりで大丈夫?お酒飲まされたりしてないよね?」
わたわたと慌てるようすは、しっかりと兄貴を尻に敷く人物とはとても思えない。
そのギャップの激しさに思わず肩を震わせて笑ってしまった。
これを言うと怒られかねないので、懸命に我慢した。
「…なんだかんだで遙も男の子連れてきちゃったね」
手を休めることなく、俺を見るこなく、少し残念そうに呟いた。
青山家も朝日奈家も誰一人親に世間一般の幸せを報告できないからだ。
碧ちゃんは、辰樹を取ってしまったから、その世間一般の幸せを俺を通して辰樹の両親に与えることを望んでいたのだろう。
きっと負い目に感じてしまっているのかもしれない。
「そう思えばそうかもね……でも、あれはココだからだと思う」
「僕だって辰樹だからだよ。辰樹だから好きになったと思う…きっと大輝もそう」
「……だな。言っとくけど、今までで一番本気だよ?」
「見える、見える。幸せって顔に書いてある」
碧ちゃんは、自分のことのようにして満面の笑みを向けてくれた。
俺は本当に必要だったのか、と思うほど手慣れた手付きで後片付けをしてくれたおかげで、短時間で片付いた。
「もう、ココちゃんのトコ行ってあげなよ。ここはもう大丈夫だから」
「うん。ありがとう、そうする」
「ココちゃんって結構、人見知りなタイプなんだね。かーわいっ!またノロケ聞かせてよね」
そう言って、悪戯っぽく笑ってみせる碧ちゃんに、兄貴が惹かれた理由を感じた。
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