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目を離すと
遙side
「おーい、お前らーほどほどにしとけよー。明日が地獄だぞ」
「わーってるって!大丈夫だよな?大輝っ!」
「ちょっと飲み過ぎだって!今日のうちに全部飲まないと行けないわけじゃないんだからっ」
アルコールの臭いをぷんぷんさせて高らかに笑う。
相当酔いが回っているようだ。
ココは兄貴の前の席で丸くなって寝ていた。
「ココ、大丈夫か?そんなところで寝たら風邪引くぞ」
仕方なくゆっくりと抱き起こして揺すり起こす。
「うぁ…?」
「ココ、風邪引くぞ。ベッド借りるか?」
「はゆ……ねむいー」
目を擦りながら寝ぼけたようすで口を開く。
俺の首にしがみつき、安心したようにまた目を閉じる。
すぐに、すよすよと寝息をかき始めてしまったココに、なぜか妙な違和感があった。
「……おい。酒臭くないか?気のせいか…?」
「ほぇ…?」
「ちょっと息吐いてみて」
「はぁーっ…こぉ?」
「酒臭いぞココっ!お前飲んだだろ!?」
妙な違和感はニオイからから来ていた。
微妙にアルコール独特の酸い臭いがした。
「お前…酒飲んだのか?」
「飲んれなーい。ぶどうジュース飲んらー。ちょっと苦かったぁー」
「ぶどうジュース?」
「あれぇーっ」
ココが指をさしたのは机に置いてある空のワインボトルだった。
「おい。誰だ…ココに酒飲ませたヤツ!!」
まったく、目を離した隙に…。
油断も隙もない。
ココが指をさした時に、ギクリというような顔をしているヤツが一名いたため、
犯人探しはものの数十秒で済んだ。
「おいっ、兄貴!ココにワイン飲ませたろ」
「言っても1口だけだぜ?」
「でも現にこうなってるだろが」
いい感じに酔っているため、何を言っても右から左だった。
少し飲んだくらい何なんだだっていう話だが、俺は心配で仕方がない。
一応未成年だし、だめなものはだめだ。
「うーん…頭いたいよぉ。お水ほしぃー」
「ちょっと待ってろ。すぐ取ってくるから」
ココをソファに座らせてから、水を取りに行こうとココの元を離れる。
「やらぁ……行かないれよぉー!ぼくのはゆは誰にもわたさないんらからー!!!」
「ちょっとココちゃん大丈夫なの?子どもみたいになってるよ?はい、お水」
心配そうにココのようすを伺いながら、水を持ってきてくれた。
「あーサンキュ。おーいココ、水だぞ」
「うー…んく、っく」
「ったく、あれほど念押ししておいたのに」
「ごめんね遙、僕の方からちゃんと言い聞かせておくよ」
苦笑した後、兄貴に冷ややかな笑みを向けた。
「大我も注意しろよ…」
「あはは…すまん、すまん」
頭を掻きながら愛想笑いをする。
誰も宛にならないと改めて実感した。
「全くお前らは…呑気だなぁ」
「てか、勝手に飲んじゃったんだよねー
ちょっーと目を離した隙にというか?…すぐ止めたんだけどー……」
「ごめんらさい…みんながうらやましくて飲んじゃった」
「と、取りあえず今日のところはお開きってことで…」
碧ちゃんの一言で、散らかした物を片付けて帰ることにした。
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