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足りない

ココside 「仲直りするか」 背中をポンポンと叩かれ、また顔を上げる。 「は、ゆ…もう怒ってなぁい?」 「怒ってないってば」 クスッと笑われて頬に唇を当てられる。 くすぐったくて肩を竦め、釣られて笑いが込み上げる。 少しずつ唇がオレの唇に近づいてくる。 口の端をペロリと舐められ、ヒュッと息を呑む。 こうされるといつ唇が重なるのかと、心の準備がなかなか出来なくて余計にドキドキしてしまう。 「ドキドキする?」 「……もうっ」 「かわい……」 それだけ言うと、口角を上げながらやっと唇を重ねた。 「ふ…っん、ぁっう……」 柔らかくて優しい、蕩けるようなキスに酔いしれる。 舌が入れろと言わんばかりに唇を啄き、うっすらと口を開くと、すぐさま舌が侵入してくる。 舌を吐息ごと絡め取られ、肉厚な舌を擦り付けられた。 上顎をチロチロと舐められたら、腰が反射的にビクついた。 歯列をなぞられ、また舌を捕らえられる。 今度はチュッと吸い付かれ、ビリビリと体中に電流が走った。 逃げ腰になったオレをハルの手が引き寄せ、更に体が密着する。 舌がジンジンして、オレの唇も腫れぼったくなって来てやっとハルが離れていった。 「あ……っ」 でも、まだハルが欲しくて不満げな声を上げてしまった。 「どうした?」 飲み込みきれなかった唾液をヤラシく舐めながら尋ねられる。 首筋を生暖かい柔らかい感触が蠢き下肢がビクビクと打ち震えた。 「も……と、…しぃ」 「ん?」 「もっと…欲しい…っ」 こんなんじゃ満足出来なかった。 ハルに触れれば触れるほど、もっとハルが欲しくなる。 浅ましいと思いながらも、精一杯の気持ちを伝えた。 いつもならきっと何も言わなかったかもしれなけど、今はすごくわがままになれた。 もっとオレに触れて欲しい。その気持ちが日を追うごとに膨らんで、抱え切れなくなっていた。 「なんれキスしかしてくれないのぉ?き、キスらけじゃ足りないよぉ…っ」 貪欲で浅ましいヤツだと思われてもいい。 何でもいいからこの熱をどうにかして欲しかった。 あの日、ハルに襲われた時みたいにドロドロのぐちゃぐちゃにして欲しかった。 胸が苦しくて、奥で何かが疼く…そんな感覚だった。 『今日、もしイイ感じの雰囲気になった時…「シよ?」っ言ってみろ。そうすればきっと遙はお前を抱いてくれる』 そうだ。シよ?って言えばいいんだった。 辰にぃが教えてくれたんだった。 回らない頭がちゃんと思い出してくれてよかった。 「ねぇ……はゆ、シよ? えっちなことしてよ…もっと触って?」

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