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いただきます!
ココside
「さっ、こんなもんかな」
「クンクン…いい匂い…」
カレーの香りが鼻孔をくすぐり、唾液がじわりと滲み出る。
「これ絶対うまいぞ。ココが一生懸命作ったからな」
ハルの言葉に思わず口角が上がる。
「ふっ、へへ…っ」
「ふはっ、お前変な顔になってるぞ?」
「なっ!はぅ…っ!」
よだれを服の袖で拭きながら、慌てて口元を隠した。
ハルがご飯をよそってがルーをたっぷりかけてくれた。
キラキラして美味しそうだ。
テーブルを拭き、オレ専用の木のスプーンとハルの使っている金属のスプーンを並べる。
「い…いただきます」
「いただきまーす」
「あ、すごくおいひい……」
口の中に入れるとピリッとしたからさが舌を突いた。
でも、オレのために甘口にしてくれたおかげで食べやすい。
「俺が作ったカレーよりうまいぞ。センスあるんじゃないか?」
「ほ、ほんと?」
自分が思っていたよりも美味しくて驚いた。
途中まで切ったニンジンは大きさが不揃いで、まだ若干芯があって、オレの炒めた肉も少し焦げてしまっている。
それでも褒めてくれて、オレの努力を認めてくれたのがとても嬉しくて、おかげで自然と顔も綻んだ。
まだハルの料理の腕は劣るけれど、何かハルの力になりたい。
強くそう思った。
ハルを驚かせたくて、今度はオレがひとりで夕食を作ることにする。
「今度…」
「なんだ?」
「今度オムライスの作り方教えて…」
「おう、いいぞ。いつ作る?」
「は、ハルが忙しくない時でいい…」
「じゃあ、来週の日曜日。約束な?」
右手の小指を差し出され、オレも小指を絡める。
やっぱりハルの手は大きくて温かい。
「うん、約束…」
来週が待ち遠しいなぁ。
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