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境界線が無くなった日5

ココside よし、ハルが帰ってくるまで寝ないっ。 そう決めて、すぐに眠たくならないように7時くらいにお風呂に入った。 ご飯はその次に済ませて、お皿も洗った。 この間ハルが買ってきてくれたふわふわ生地のネコのつなぎのパジャマを着て、どっかりとソファに居座った。 夜更かしのお供にコーヒーも作った。 いつもハルが美味しそうに飲んでいるので試しに自分で作ってみた。 「うげっ、苦い……こんなの飲めないよぉ…」 今度は紅茶を作ってハルを待つことにした。 「あ、美味しい…!」 いつもハルが俺のために入れてくれる分量を真似して入れてみるとすごく飲みやすかった。 そうして、テレビを見ながら紅茶を飲んでいると9時30分頃に電話がなった。 少しうとうとしかけていたのが一気に目が冴えた。 ずっと聞きたかった声がそこから聞こえてくるのだ。 初めて電話で喋るっ!そう思ってしまったらなぜかとてつもなく焦った。 「もしもしココ?大丈夫かー?」 明るく告げる数十時間ぶりのハルの声に寂しさがぐっと込み上げる。 「う、うんっ、どうしたの?」 「飯、ちゃんと食ったか?風呂は入ったか?」 「うん、食べたよ。お皿もちゃんと洗った!えっと…お風呂は夕方にもう済ませたの」 「えらいな。俺はまだ帰れないみたいだから、待ってないで早く寝ろよ。」 「はーい…うん。じゃあね…」 しょげながら受話器をおこうとした時、ハルの声がしたからまた慌ててそれを耳に当てた。 「なな…っ、なに?」 「何か言いたい事あったんじゃないのか?別になかったらいいけど…何か言いたそうにしてたから」 「ううん…。いいよ何でもない……」 「ウソつけー。気になんだろ。言って」 早く会いたいよ。早く帰って来て…。って言いたい。 それで、早く頭をいつものように撫でて欲しい。 独りでこんなにハルの匂いに包まれているところに居るなんて耐えられない。 「ほら、なに?」 ハルはずっと俺が言うまで待っててくれた。 伝えようと心の中の気持ちを口に出そうとすると、なぜか鼻がツンと痛くなって、目が熱くなった。 「うぅ…っ、ぐすっ、はるぅ…はやぐがえってぎで…っ」 「うん、それで?他は?」 「………っさ、さみぢぃ…っ」 「よし、いい子。やっぱり俺これから帰るわ。我慢してたけど、やっぱり俺も早くココに会いたい」 それだけ言うと、電話が切れた。 電話が切れたと同時に、自分の中の何かも切れたような気がした。 おかげで、とてつもない安堵と嬉しさで急に眠気が襲ってきた。 「……ぐすっ、ね、寝ないもんっ」

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