遙side その日は晴れていたが、夕方から嵐になった。 幸い俺はいつも傘を常備していたけれど、嵐というだけ風がきつく、結果的に濡れるハメになった。 バイトが終わってからも嵐は続き、俺は夜道を早足で進んでいた。 バイト先が俺の住むマンションから近いことのメリットがこういう時に現れる。 俺がいつも通る近道にトンネルがある。 昼間もうす暗く人通りの少ないトンネルだ。 車はもちろん滅多に通らないし閑散としていて、サスペンスとかでよく見かける犯罪者の好みそうな場所だ。 車が通らなさすぎて通った時には少し焦るし、 こんな所は男でもここ通るのは気が引けるが、これは家への１番の近道なのだから仕方がない。 俺は一刻も早く家に帰りたいのだ。 「…なんか嫌な予感するんだよなぁ」 そう呟いた瞬間、俺は何かを踏んづけた。 「に゛ゃ！！？」 「うわっ！！」 嫌な予感がすると呟いた矢先のことでかなり動揺する。 な、なんだ！？？ 「…ね、ネコ？」 正体が気になり、鞄の中にしまっていたケータイのライトで照らしてみる。 「にゃっ！」 声がした辺りにライトをかざすと、声と共に目玉が一瞬ギランと光った よく見てみると、それはネコの耳を持った子どもだった 「なんだ……！？」 待て、落ち着け俺…友達にもネコ科の人間はいるじゃねーか。 夜の9時過ぎだし、こんな人気のないところにいるんだ、家出した子どもに違いない。 「にゃう…」 力なく鳴くソイツと目があったが、怯えたように目を逸らした。 よく見るとひどく薄着で両肩を抱いてガタガタと震えている。 おまけに泥だらけで、このまま放ってはおけない状態だった。 「お、お前大丈夫か？怖がらなくていい、ほら」 そう言って、手を差し伸べてみた。 早く警察に電話しないとな…