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嵐の夜に2
遙side
手を差し伸べても、その手を見詰めるだけで取ろうとしなかった。
怖いのか寒いのか、両方なのか分からない。
けれど、ソイツはプルプルと震えていて、膝を胸までつけて丸まった小さい体がさらに小さくなった。
こういう時どうすればいいんだ…
あまりに人とコミュニケーションを取らなさすぎて、どういう言葉をかけていいかさっぱりだ。
これほど今までの自分の行いを悔やんだことはない。
「大丈夫ほら」
思い切ってそいつの頭を撫でてやった。
指先が髪に触れるだけで肩をビクン竦ませたが、次第に気持ちよさそうに目を細め頭をこすりつけたりゴロゴロと喉を鳴らし始めた。
その子ネコのような姿に張り詰めていた空気が少し緩む。
なんか可愛いな…コイツ。
そう思っているとキュルキュルと大きな音が聞こえた。
「腹減ってるのか?」
すると、そいつが頷く。
すぐにポケットというポケットを探すと、鞄の中にクッキーが入っていた
「ん、ほら食べな?こんなのしかなくて悪いな」
掌に乗せて渡すと、瞬きする瞬間にさっと取りさって一口に平らげてしまった。
それにしても、コイツ家出したのだろうか?
それにしてはみすぼらしい身なりをしているし…
これは警察に電話した方がいいよな。
早くウチに保護してやらないと、こんな寒いところにいたら最悪の事態に陥りかねない。
「どうしてこんなところにいるんだ?」
「…………」
「えっと…お前、ウチは?」
「………ない」
思ったよりも可愛らしい小さな声が返ってきた。
これが俺とコイツの初めての会話だった。
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