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家に帰ろう

遙side 「そうと決まれば話は早い。さ、立てるか?」 「ご、ごめんなさい…立てない……」 こんな嵐のせいで冷えきった外なのに素足だし、肌は氷のように冷たい。 きっと手足の感覚がなくなっているのだろう。 腹の虫が盛大に鳴っていたし、自然と体力も消耗してしまっているはずだ。 帰ったらちゃんと何か食べさせてやらないとな。 見つけた時から思っていたが、ココは何だか不思議な雰囲気で、とても心を惹きつけられる。 最初は驚いたが、なぜか恐怖はなかったし放っておけないような、守ってやりたくなるような気持ちになる。 「仕方ない、ほら乗れ。それからこれ着てな」 俺の上着をココに着せてから背を向けてしゃがみ、背中に乗るよう促す。 「あ、ありがとう…」 恐る恐る乗ったココをしっかりと背負い、傘も差さずに大雨の中に飛び込む。 一刻も早くコイツに温かい食事を出してやって、ゆっくり風呂に入らせてやりたかった。 「あのさ、シェルター?に居たのに、今は何でここにいるんだ?」 「いやだ…っ、戻りたくない!!」 「それは分かってるから。 今まで、どうやって暮らしてたんだ?それくらいは言えるだろ」 「 ……言えない。言いたくない」 なんだよ、これも地雷かよ。何なら喋れるんだ? 内心呆れながら歩みを進める。 「悪かったもう訊かないから。温かい飯食べような」 「…………ぐすっ」 嫌なことを思い出させてしまったことを謝っていると、ココが後ろで泣いている気配がした。 力一杯に俺の服を握りしめ、声を殺して泣くココに胸がきゅっとなる。 初めての感覚に疑問を抱きながらココを背負い直した。 「男だろ?泣くんじゃない。詳しくは、お前が話せるようになってからな?こんなの本当に風邪引いちまうから、早く帰ろう」 泣きじゃくるココを宥めながら、土砂降りの雨の中、家路を急いだ。 さて、冷蔵庫に何かあっただろうか。

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