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餌付け

遙side 「オムライス…食える?」 「おむ…?おむつ?」 「まさか、食べたことないのか!?」 「うん、それ美味しいの?」 「味は保証できないが、不味くはないと思う」 子どもの喜びそうなものを、と作ったはずなのに、オムライスを知らないなんて… 絶対に喜ぶと思って自信満々な顔をしていた自分が恥ずかしい。 それ以前に、ネコ科なんだから魚の方がよかったかもしれない。 「完全に選択ミスだな」 「でも、すごく美味しそう…甘い匂いがする」 「美味しそう?ならよかった」 ピラフの上に乗った玉子に刃を滑らせると、トロトロの内側が覆い被さる。 ココは目を輝かせてそれを真剣に見守っている。 「こうやって、ケチャップで…」 冷蔵庫からケチャップを取り出し、玉子の上に「ココ」と文字を書く。 オムライスを食べる前のお決まりの儀式だよな。 俺も子どもの頃は名前とか書いてもらえたら喜んだものだ。 「オレの名前…!」 「そ、オムライス食べる時こうやって楽しんだり出来るんだぜ」 「オレも!オレも書きたい…っ!」 目をキラキラ輝かせて俺を見詰め、耳をピンと立て、尻尾は小刻みにプルプルと震わせた。 「じゃあ、俺のに書いてみる?」 「うんっ」 ふふ、嬉しそ。

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