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第2話

 キッチンに立つ。 簡単なもの、と言われても、冷蔵庫の中は水とビールと卵ぐらいしかなくて途方に暮れる。 ちゃんと説明してくれてたら、買い物行ってから来たのに。 「こんなじゃ何も作れないんだけど?」 「じゃ、買い物行って」  何なの?何なのこの扱い? タダ働きの家政夫? もうこのまま家帰ろっかな…  だいたい、子ども来てるとか聞いてない。 2人で同棲気分満喫?とそりゃあ内心ワクワクしてなかったと言えば嘘になるんですけどね!  近くのスーパーに行く道すがら、脳内でマサキに恨みつらみを罵りまくっていると。 「ミヤビくん!あたしも行く」 愛莉…ちゃん、だっけ。小走りで追っかけて来たから、止まって待った。 「愛莉ちゃん、は、パパから俺のことなんて聞いてんの」 「えー?家政夫さんが来るって」  やっぱりかよオイ! いい加減にしろよあのオッサン…! 「おばちゃんぽい人が来ると思ってたから、ビックリしちゃったよ。ミヤビくんは今いくつ?」 いきなりタメ口なんだね、まあこう見えて中身は10歳だもんね。 「俺は、25だけど」 「そうなんだ。彼女は?」 ヒッ。 そうだよな、女の子こういう話題好きだよな。 出身地きいてくるみたいに、挨拶がわりに、恋人や好きな人の有無とかきいてくるよな。 「い、いない、けど」 愛莉ちゃんはそこからは特に話して来なくなったけど、なんか楽しそうだった。 「いたーだきーます!」 優香ちゃんの号令に合わせて、みんなで手を合わせる。 優香ちゃんはポロポロ食べこぼしたり時に手づかみで食べたりと、まだ大人の手伝いが必要みたいだけど… マサキは黙々と食ってる。  しゃあなしに、俺が優香ちゃんの口を拭いてやったり、こぼれたおかずを始末してやったりするとにっこりして 「ありがとお」 …天使かよ。 優香スマイルに撃ち抜かれつつ、手を拭いてやりお茶をコップに注いでやったり。 「ミヤビ、優香風呂入れてやって」 食事が済んだらマサキからそんな声。 へ?と優香ちゃんを見下ろすと、キラキラした目で俺を見つめている。 「ゆ、優香ちゃん、一緒にお風呂…」 「入る!」 喜びいさんでさっさと風呂に行ってしまった。 「えーっ」 愛莉ちゃんがなぜだか不満げにふくれると 「お前も一緒に入ってくれば」 マサキが意地悪そうに笑った。  こいつ、我が子にも俺とおんなじ態度か。容赦ねえな。 てか、10歳は、アウトだろ… 「何言ってんのよパパのバカ」 冷たく吐き捨てて愛莉ちゃんは寝室へ駆け込んでいった。 愛莉ちゃんが拒否してくれてひとまずホッとしたけど、ほっといて大丈夫なのかな。 「愛莉ちゃん、お風呂出たから」 風呂から出て、寝室のドアの前で声をかけたが、返事はない。 そっと、ドアを開けると、愛莉ちゃんは眠ってしまっていた。 ショートパンツの脚が冷えそうなので、そのへんの毛布をかけてやって、部屋を出た。

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