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第10話 家事はお任せ
「それでどうしたの?迎えに行かなかったの?!」
まさかと思い声を掛けると、斗真が心外な!と顔をしかめた。
「行ったに決まってるだろうが。ただ、マリーは今妊娠九ヶ月目でよ。丁度実家でのんびり過ごさせたらいいかなと思って」
「なっ、なぁんだ~。良かった~」
そこまで話を聞いて、祐は安堵の息を吐いた。
母の言い方ではまるで、離婚するかの様な話だったのだから。
それで遠いフランスまで、様子見も兼ねてやって来たのだから。
「だから心配無用。仲直りはしてるよ。ただお前の母さんから聞いてると思うけど、マリーが居ない間の家事全般をしてもらいたいんだよ」
そういうことなら全く問題ない。
どうやらフランスに祐を送り込む母なりの作戦だったみたいだ。
そうでなければ、子どもをそんな修羅場に送り込むはずがなかった。
「家に家族以外が居るのって落ち着かなくってさ…。だから家政婦とか頼みたくなくて。だからお前に来て貰ったんだよ。せっかくの夏休みに悪かったな…」
これが離婚の危機ともなれば、心穏やかにこんな事をしてはいられなかっただろう。
けれど赤ちゃんが生まれるマリー伯母さんの安寧の為と寂しい伯父さんの為なら嫌ではない。
「分かったよ。夏休みの間の一ヶ月、マリー伯母さんの代わりに頑張るよ」
祐はしっかりと頷いてみせた。
「おっし!俺は仕事が忙しいから家事は頼んだからな!!」
「マリー伯母さんの様にはいかないかもだけど、料理だけは任せてね」
祐は自信満々に、ニッコリと笑顔で答えた。
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