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第13話 まさかの場所から
斗真が忙しい事もあり、ひとりの寂しさを感じる事もあったが、海外の違う文化圏での生活の違いを感じて楽しくもある。
先日は斗真に連れられて、買い物へも行った。
最近は生活に慣れてきた事もある。
「それに、思いっきり料理できるし」
何よりも母の視線を気にしないで、様々な材料を使っての料理作りを楽しめるという理由が一番大きい。
風呂上がりには、手作りのとろふわプリンを冷蔵庫に入れてある。
口に入れる瞬間が楽しみだなぁと、思いながら頭は温かな浴室の空気にぼんやりとしてくる。
次第に体がずれて湯に深く浸かっていく。
コックリと舟を漕ぎ始めた祐は、鼻の頭を湯に浸けて、慌てて顔を上げる。が、再び同じ様に舟を漕ぐ。
「…あっ」
心地よさにウトウトし始めていた祐だが、さすがに危機を感じて慌てて姿勢を変えようと身を起こした。
「…っ!!!」
起こそうとした拍子に、足が滑りまさかの浴槽へと沈む。
一瞬の息苦しさ。
急いで立ち上がらなくてはと思った。
けれど、立ち上がらなくてはという考えが脳内から霧散してゆく。
湯が自分の頭上でキラキラと揺らめくのを綺麗だなと、何故か他人事の様に見つめながら、何処まで落ちていくのか…不思議と苦しくない。
訳の分からない感覚に包まれながら、祐は意識を手放した。
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