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第37話 痩身の男

ふっと、気がつけば揺れも収まっている。 なにやら人の気配と小声で喋っているのは分かるが、内容までは理解出来ない。 聞き耳を立てていると、足音が側に近づく。 それから祐の袋の口が開けられて大きな両手がニュッと入れられたかと思うと、まるで猫でも扱うように外へと出された。 「あ、…痛っ」 長い時間同じ格好で丸まっていた為、節々が痛い。 その場で丸まって、痺れがとれるのを待つ。 袋の外は、拐われた場所と同じく森の中ではあるが、暗くジメジメとしていて薄気味の悪い所だった。 「アイツなんだが…」 頭と呼ばれていた男の声がはっきりと聞こえて、祐は前髪から隠れた目だけをこっそりと向ける。 どうやら誰か人と話をしている様だが、見たことのない男だ。 二人はチラリと祐を見ると、また顔を付き合わせて話を再開させた。 どうやら自分の事を話をしているらしい。 祐は、相手がどんな人物かを見ようと先程よりも顔を少しだけ上げた。 大男と同じくらいの背の高さだが、筋骨隆々ではなくヒョロリと痩せている。そして何よりも着ている物が違う。 大男達は布に頭と両腕が出せるだけの簡単な服にズボン、足元も全員が茶色の単純な作りの靴を履いているだけだ。 しかし明らかにその男は、質の良い白い布に金色の装飾が施された衣服を纏っている。 指にはこれ見よがしの大きな宝石がこの薄暗い場所でも輝いていた。 とてもいい人とは、思えなかった。

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