41 / 61

第43話 街の噂

大陸の王都・アスターリアから東に100キロほど離れた所にフレスタルという街が在る。 王都に負けず劣らずの活気ある賑やかな街で、中央に延びる大通りの左右は、数多くの店が立ち並ぶ。 アスターリア隣国からも旅人が足を伸ばす程の人気の地方都市であった。 特に水溢れる花の都アスターリアと遜色ないフレスタルは、市民らも誇りとしていた。 その周囲の小さな村も同じく恩恵を受けて、それなりに発展を進めていた。 そんな村のひとつに盗賊が現れ好き放題やらかしたのだから、フレスタルの住民も旅人や商人も震え上がった。 なにしろ、そんな話はアスターリア付近での事件以外聞かなかったからだ。 それが、今まさに自分達に降って沸いた問題だからパニックにも陥る。 「よりによって、こんな時期に…」 パン屋の男が呟くと、噂していた買い物客の女が「バカね~」と言った。 「今だからに決まってるでしょ?」 「あと10日もすれば『花の精霊祭』が始まるんだから」 もう一人の買い物客に言われて、パン屋は頷いた。 『花の精霊祭』といえば、アスターリアだけでなく他国からの観光客も多い。 祭りの期間中は、恐ろしい程に人工が溢れる。 まさに稼ぎ時。 店主達にはとても有難い祭りである。 それが万が一、襲われでもしたら…と思うと不安にもなる。 「確かに。盛大な祭だから、国中から沢山の見物人が集まる…だから狙われても仕方無いか」 「それにしても無いところから取らずに、腐った貴族や金持ちからふんだくればいいのにね~」 はあっと溜め息と共に客の女が呟くと、側にいた男が明るい声を上げた。 「まぁ、盗賊なんて騎士団の皆様に任せればあっという間だよ!!」 「我らが騎士様だからな!」 男の声にパン屋も客達も頷いて笑顔で同意した。 「違うだろう!?我らが領主様だろ?!!」 側にいた別の客から訂正が入る。 その言葉に、店内の全員が納得と頷いた。 「そうだ!!領主様が居れば怖いもの無しだな!!!」 「そうだそうだ!!」 そこかしこで、そんな話が祭の話しと共に大いに盛り上がっていた。

ともだちにシェアしよう!