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第44話 騎士団

一方、襲われたカヤマの村では、騎士団が現状把握に勤めていた。 「副団長!」 声を掛けられてミシェル・ルロワは長い銀髪を風に靡かせて振り返った。 「どうしました?」 ミシェルが男にしては優しく涼やかな整った顔で部下を見つめながら問う。 その美貌は、どんな姫君も女神さえも敵わないと誰もが思うほどだ。 そんなミシェルに見つめられた為、騎士服に身を包んだ男は若干頬を染め、口を開いた。 「指示通りに村人からの聴取も終り、女、子どもから優先的にガジュマ車へと乗せました。今日のこれからの予定としては、残りの怪我の無い男達と我々である程度村の修復を行い、夕刻には切り上げるように致しました」 「分かりました。では、これから私は団長と共に報告へと一旦戻ります。ですから、」 「あの、その事ですが…」 ミシェルが指示を出そうとした言葉を遮った部下が、心底言いにくそうにしている。 「まさか…」 「はい、その~」 騎士団らしくない言い淀んだ部下の言葉に、涼やかな顔も眉がつり上がる。 「…どちらへ向かいましたか?」 「他の者が見たらしいのですが、東に向かう裏道だったとか…」 その言葉を聞いて、ミシェルは踵を返しながら言い放った。 「あとの事は頼みましたよ!私は行きます!」 「副団長!?」 「あの人は~っ!!!」 口の中だけで怒りを込めて呟くと銀の長髪と白のマントを翻すとガジュマの背中へ飛び乗る。 ガジュマは人ひとり乗せるなど何の負担にも思わない力と足の速さを持っていた。 特にミシェルのガジュマは、主人思いの賢い個体だ。 その首筋に唇を寄せると「はっ!!」とミシェルは掛け声と共に目的の場所を目指して駆け出して行った。

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