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第45話 副団長の悩み
ガジュマの手綱を操って、ミシェルは森の小路を駆け抜ける。
幼少の頃からガジュマ乗りを嗜んできたミシェルは騎士団の中でも一番の乗り手であった。
危なげなく乗りこなす為、ガジュマも主人を心配しなくとも安心して思いきり走ることが出来ていた。
「何度勝手をしたら気が済むのか、あの人は…っ」
風に長い髪を靡かせながら、ミシェルは前をしっかりと向いたまま愚痴を溢した。
いつもはこんな自分ではないのだ。
もっと冷静で何事にも落ち着いて取り組んでいる。
こんなにも慌てて走り、愚痴など溢す事はないのだが…。
ミシェルは誉れ高き騎士団の副団長を務めている。
只でさえ実力主義のフレスタル騎士団の中でも副団長を任されるのは、悲しいかな剣の腕という訳ではなかった。
騎士団に入るのだから、それなりに剣技にも自信はある。
しかし、精鋭揃いの中でミシェルが突出しているのは、ガジュマの扱いと不本意だがその美貌によるカリスマ性があったからだ。
ミシェルの美貌に騎士団員は皆、虜なのだ。
だから団結してミシェルを護ろうと力を貸してくれる。
そして、もうひとつ。
この任務こそが大きな理由であった。
それは…。
「会ったら絞め上げて差し上げましょうね、団長殿!!」
自由奔放な団長の手綱を唯一扱えるという事だった。
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