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第46話 フレスタル城

フレスタルの街がよく見える丘がある。 赤い短髪に騎士服が似合う男が、その丘の上に建つ屋敷の前にフラリと現れた。 ガジュマの手綱を操ると、勢いよく門前に来る。 「お前達ご苦労だな。ところで主人は居るか?!」 「あっ!!マルタン様!はいっどうぞお入り下さい」 門番をしていた兵が頭を下げ挨拶をすると、開門の声と共に大きな門扉が開かれた。 その間をヴァレリー・マルタンは颯爽と駆け抜け建物の入り口へあっという間に辿り着く。 側に来た男にガジュマを預けると、玄関へと向かった。 「お久し振りにございます、マルタン様」 そこには顔馴染みの執事が柔和な顔で出迎えてくれた。 「お~!久し振りじゃなギヨーム。ミカエルは?」 「執務室に居られますので、どうぞ」 そう言うとギヨームは先頭に立ち、ヴァレリーを誘導してくれる。 「すまんな」 ヴァレリーは毎度の事ながら申し訳ないと思いつつも一応は形として従う。 案内など不要ではあるが、一応誉れ高き騎士団の長としては、これくらいは受け入れなければ格好がつかない。 適当な事をしてこれ以上副団長に文句を言われては、たまったものではない。 それに一応今はここの主人からすれば、部下の立場だ。 他の使用人も見ている中で、主人にいつも遠慮の無い騎士団長となるとあまりイメージは宜しくない。 イメージを落とすのはよくないだろう。 高価な石で造られた廊下、緻密な細工の施された壁、最高の職人が作ったと思われる彫刻など華美ではないがセンスの良い城である。 何度来てもいい城だと感じる。 元々ここは王族の別荘として建てられていた城を増改築して、今こうしてあるのだ。 領主の館ではあるが、今ではフレスタル城と呼ばれていた。 見慣れたドアの前まで来ると、軽いノックの後にギヨームが室内へと来客を告げる。 「ミカエル様。マルタン様をお連れ致しました」 「入れ」 中から短い返事を貰うと、ギヨームがドアを開けた。 ヴァレリーは、遠慮なくズカスカと部屋へと入った。 「おーっ、ミカエル!またひとりでどこぞへと出掛けたらしいな!?そしてまた出掛けるつもりか?!」 室内へと入るや否や目的の相手が出掛ける準備をしていたことに気がつき、唇を尖らせて文句を言った。

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