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第47話 領主

「ヴァレリーうるさいぞ、頭に響く。フンッ…お前こそ一人でどうした。いつから騎士団は団長の自由行動が可能になった?」 そう言い放ったミカエルの声は高すぎず、低すぎず。 聞き心地の良い声だが、言葉は辛辣だ。 大きめの窓のついた室内。 華美ではない、それでいて高級感ある調度品が置かれる室内は太陽の光で益々輝いて見える。 眩しいほどの光の溢れる室内。 逆光になっており嫌味を言う主は陰になってよく見えない。 そんなミカエルは側に立て掛けていた剣を腰ベルトへ固定すると、漸くヴァレリーに視線を向け前へと出てきた。 すると逆光で見えなかったミカエルの顔がよく見えるようになる。 陽の光を背後に従えてこちらに顔を向けたのは領主、ミカエル・ジュール・フォン・ベルナールだ。 飽きるほど見てきた顔ではあるが、ミカエルの顔は改めて見なくとも整っている。 黄金を溶かしたかのような輝く金の髪に、海を凍らせたかの様な瞳。 それを縁取る睫毛も眉も金で、太陽を受けて煌めいている。 すんなり通った鼻筋といい閉じられた口といい輪郭といい。 同じ男として大多数のものならば悔しさが立つ完璧さだった。 オーラも神々しい。 しかし、それを台無しにする眉間の皺と冷めきった瞳の光がヴァレリーを捉えていた。

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