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第52話 奴隷

「嫌だ!!」 叫んだ祐はその場にしゃがみ込んだ。 見られたくないし、触られたく無い。 「ふうっ。仕方の無い精霊ですね。そんなことでは、これからご主人様にご奉仕なんて出来やしませんよ」 アルゴは小さな子どもに言い聞かせるように優しく言った。 「フフッ、特別ですからね。一人で行わせてあげましょう。ここならまぁ逃げることは不可能ですし…。休憩はあまり取れませんから、今のうちにしっかり出しきって下さいね」 そう言うと祐を残して全員が出て行った。 「よ、良かった…。…んっ」 安堵した途端に祐は急に我慢が出来なくなり、仕方なく穴の中へと用を足す。 終えると近くの小石を削って土を掘り返し、穴をなんとか埋める。 こうしてトイレまでも管理されている今の自分は、一体何だ。 奴隷という言葉が頭に浮かぶ。 そうだ間違っていない。 自由を奪われ、全てを管理され、いいようにされるのだから。 授業やテレビ等で知った過去の事として頭にあった出来事が、今現実に自分に降りかかっている。 てっきり肉体労働かと思ったが、男達の言動からすると別の需要を見込まれている様だった。 どちらにしても安全な生活ではない。 絶対に嫌だ。 どうにか逃げ出したいが、考えても名案など思い浮かばず無理だと頭を振る。 さっきから何度も繰り返し考えているのだから、無理なんて事は百も承知していたではないか。 それなのに、どうしても考えずにはいられない。 唯一の希望は、神隠し。 この場所に放り出された時の様に、突然元の場所へと戻れないだろうか。 これからどうなるのか…。 「帰りたいよ…お父さん、お母さん…」 あの平凡ながら平和で懐かしい我が家を思い出して、祐は目を潤ませた。

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