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第53話 食事
あれから祐は、縄を引かれてテントから引摺り出された。
それから昼食だと言われ、女たちと円になって食べることになった。
見張りの男達の視線を浴びながらの食事は、居心地が悪い。
祐だけは、他の女達より少しだけオマケの果物がついた食事を用意された。
珍しい人間だから貴重品扱いらしい。
そうして用意された料理は簡素な物だ。
木で出来た素朴な皿に載せられて渡されたのは、何の肉か分からない塊に紫の謎のソースが掛かっていてお世辞にも美味しそうとは思えない。
「…このソースの色、凄い。食べられるのかな?」
ソースの色味を見て食べられるのかと不安に視線を落としている間に、周りの女達は普通に黙って食べ始めた。
「…大丈夫、皆食べてるし」
それに食べなければ力も出ない。
これから先の事は分からないが、生きて帰るためには食べるしかない。
それに空腹も手伝って恐る恐る口にすると、鶏肉っぽい味で意外にも普通に食べられた。
ただソースはピリッと香辛料が舌にくるだけの微妙な味で、ただでさえ辛い物が苦手な祐は、なるべくフォークで避けた。
添え物の木の実は甘く例えるならビワだろうか。
最後にとっておいた果物は、桃と林檎と蜜柑を掛け合わせた様な不思議な味がしたが、とても美味しくて少し元気が出た。
そして小腹を満たしたアルゴ一行は、祐達を乗せて再び馬車を走らせたのだった。
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