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第54話 地球のどこか

ここへ来てまたひとつ驚いた事がある。 出発へ向けて乗り込む際に嘶きを耳にして何気なく目を向けると、そこに居た生き物が馬には到底見えない生き物だったからだ。 動物好きな祐は小さい頃から図鑑をよく見ていたし、最近もネットで生き物の事を検索して記事を暇さえあれば読んでいる位だ。 けれど全く見たことが無い。 新種発見などという話も聞いていないが、何だろう? 牛の様に角を生やしていて、体は馬っぽいが毛は長い…。 角は細く前の上に向かって生えているし、体も引き締まっていてスリムだ。 尾は長い毛と一緒になっていて確認出来なかった。 不思議な生き物だ。 思い返せば泉の近くで見た蝶も蝶には似ていたが、違っていた。 「そういえばあの蝶々もなんか蝶々じゃなかった…。もの凄く大きかったし形も違ってた。それに、もの凄く光ってた様な…」 ここは地球のどこだろうか。 見たことのない生き物ばかりだ。 それに植物も大きいし、独特の珍しき花ばかりな気がする。 もしかしてアマゾンの様な場所かとも思ったが、森の様子からしてやっぱり違うと思った。 籠の中で膝を抱え丸まって、ひたすらそういう事に頭を巡らせていた。 ガタゴトと音を立てて籠を揺らしながら、馬車…というのだろうか…は走る。 馬車の中は静まり返っていたが、時折同じ立場の女達がチラリと珍しい祐を興味深そうに見てきた。 食事の時もそうだった。 自分にとってこの国の色んなところが珍しいのと同じ様に、彼女たちからすると祐も珍しいのだろう。 日本なら珍しくない容姿でも外国の人間からすると興味深いのも分かる。 だからといって、側で常に視線を受けるのは困惑しかない。 「見ないで欲しいんだけど…」 その居心地の悪さから、瞼を閉じてやり過ごした。

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