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第56話 運ばれて行く先は
ぐすっ、ぐす…。
集められた籠の中からは啜り泣きも聞こえてくる。
祐だって泣きたい。
けれど、涙も出ないほどの緊張感と恐怖心に囚われて呼吸も儘ならない。
そんな中、今度は順番に籠が何処かへと運ばれて行く。
いつ自分の番が来るのか、ビクビクしている祐の元へアルゴの側近の男がやって来た。
「えっ?!」
怯える祐にニンマリと笑いかけると、籠に手を掛けた。
そしてとうとう籠を抱えあげられてしまった。
ここで抵抗しなければ、本当にどうにかされてしまう。
「嫌だ!!行きたくない、行きたくない!!」
頑張って声を上げるが、男は一瞬祐に視線を落としそのあとは無視をして運んで行く。
わーわーと騒ぐ祐をよそに、男は歩を進める。
籠は別室へと運ばれ、まるで猫の子を扱うように中から出される。
思わずジタバタするが、無駄な抵抗だった。
「静かにしとかねぇとここでブチ犯すぞ!」
「っ!!」
聞いたことの無いような声で、遥か頭上から脅されると、祐は蒼白になり体を硬直させた。
すっかり大人しくなった祐を簡素な椅子に座らせると、両腕を後ろ手に拘束した。
これで暴れる事は出来ない。
真正面に座る別の男に今度は顔を固定される。
そして何かをパタパタ顔に付けられ、口に塗られた。
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