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第58話 思惑
祐は籠に入れられたままアルゴの元へと連れられて行く。
何やら部下に指示を出していたアルゴは、祐が連れて来られると人の悪い笑みを浮かべた。
「さて。可愛らしいお前はこっちにおいで」
祐がそう言われた場所に視線を向けると、そこには周囲を水に囲まれた台座に乗った小さめの緑のソファが在る。
足元には蔦の植物が這っていて、小さな可愛い花が沢山飾られていた。
それから側のランプが水面を照らして、幻想的な雰囲気を出していた。
「どうです?お前の為に特別に作らせたものですよ」
アルゴは相当今回の売買に力を入れているらしい。
「さてセッティングだ」
アルゴの指示で男が籠から祐を出す。
「うっ、やだってば!!」
そんな言葉は勿論届くはずもなく、足首を鎖で繋がれるとそのままソファへと座らせられた。
「いいですね~!可憐な森の精霊が本当に居るようですよ!!今夜はお客様に大満足して頂ける事間違いなしです!!」
その場で踊り出すのではないかと思えるくらいに、アルゴの機嫌は最上級であった。
「そんな…っ、嫌だ!!」
勇気を出して言ってみるが、アルゴは笑うばかりだ。
「売られて愛人もいいですが…そうですねぇ、ここで毎回客を相手に飼い殺しがいいかもですねぇ~永遠に売り続ける…フフフッいいかも…」
壮大な何かを思い描いている様で、その細い目が三日月の形に細くなったのを見て、ゾクリと祐の背筋に何かが走った。
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