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――9月15日。 夜鷹が手足を失って、今日で丁度一年になる。 「う゛……ああぁあッ……!」 この日の夜鷹は、いつもより一際酷い幻肢痛に襲われていた。 シーツの上で、中途半端にしかない腕の一部と太ももまでの足を滅茶苦茶に動かして、もがくように苦しんでいる。 「夜鷹っ……」 油汗に塗れた額を拭いてやろうと、タオルを持った手を伸ばす。 「触んな!!!」 「…………ッ!」 タオルが夜鷹に触れるか触れないかと言ったところで、そう叫ばれた。 部屋中に響く怒鳴り声に、俺は大袈裟に肩をビクつかせてしまう。 「あぁ、うぅう……ッ」 「…………」 夜鷹が幻肢痛で苦しんでいる時、俺は己の無力さを痛感する。 何もできない。 俺に夜鷹は救えない。 俺はなんて役立たずなのだろう。 「あああぁ、クソっ……!!  なんで俺がこんな目に……!  なんで俺ばっかりこんなに不幸なんだよ……!!  なんで……なんで……なんで、俺なんだよっ……」 「夜鷹……大丈夫か?」 「大丈夫に見えるのかよ!?」 「…………」 ああ、俺はまた余計な事を言ってしまった。 どうして俺はいつもこうなのだろう。 気が利かなくて、夜鷹を苛立たせてばかりだ。 「お前も、同じ目に遭えばいいのにっ……  お前も苦しめばいいんだっ!!」 「…………」 「ねえ、燕。俺の事、愛してるんだろ?  だったらさ、変わってよ。  お前の手足を俺にちょうだい」 「…………」 「お前だけずるいよ!!なんで俺なんだよ……!」 「…………」 俺は黙って、夜鷹の恨み言を聞くしかなかった。 夜鷹の言葉が聞くに堪えない暴言ばかりだったとしても、俺には耳を塞ぐ権利なんてない。 俺は、全てを受け入れなくてはならない。 「憎い……憎いよ……  あの時、俺を線路に突き落とした奴が……」 夜鷹のあの例の事故は、ただの事故ではない。 正確に言うならば、事故ではなくて、事件だ。

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