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第3話

※?視点 「…覚醒したのか?」 闇の奏歌月種は呆然とクソガキを見ていた。 クソガキはさっきよりも腹立つ安心しきった顔で寝ていた。 木の影に隠れてどうなるか見させてもらった。 ……さっきの場面の何処に安心したのか聞いてみたいものだな。 指揮者覚醒させるために荒療治だったが、クソガキと闇の奏歌月種を会わせてみた。 俺自身半信半疑だったしな。 だって千年も指揮者が現れなかったのにそう簡単に現れるか? まぁもし違ったら適当に助けて俺と闇の奏歌月種と会った事全て忘れさせるだけだけどな。 そんな手間ももういらねぇな。 クソガキが抱きしめている剣は間違いなく指揮者のみが操り姿を現す指揮棒だ。 闇の奏歌月種はクソガキが寝てる事に今更気付いたのか手をかざした。 今のうちに殺す気なのだろう、そうはさせるかよ。 「今なら、まだ間に合う」 「………ストップ」 歌を歌おうとしたらしい闇の奏歌月種は集中を遮られた事で腹が立ったのだろう、声がした後ろを見た。 俺は壁に寄りかかり闇の奏歌月種を見た。 クソガキに気を取られ過ぎて気付いてなかったのか。 コイツもまだまだガキって事か。 お互い一歩も引かず睨み合っていた。 探り合いの時間が流れる。 やっぱり俺達とコイツは一生分かり合えないな。 「……その辺にしとけよ、覚醒したんだし」 「指揮棒の使い方も知らない人間は今のうちに抹殺する、お前一人なら俺はどうにだって 出来るからな」 「……四人の奏歌月種を前にしてもか?」 「…何?」 「さっき連絡したんだよ、もうそろそろ来るんじゃね?力の使い方が知らなくても四人の奏歌月種と共に最高のレクイエムを奏でればお前なんか敵じゃねぇな」 「…くっ」 闇の奏歌月種は悔しそうな顔をしてチラッとクソガキを見てから黒い羽根が背中に生えて飛び立った。 ……嘘だけどなと意地の悪い顔をする。 深追いはしないでおこう、その時が来たら…相手をしてやる。 クソガキの前に立ち頭を軽く蹴った。 ったく、呑気な奴だな。 ガツッと良い音がした。 「ぐぶっ!!」 「おい起きろよ、おねんねの時間は終わりだぞ」 クソガキは頭を押さえて悶えていた。 悪いな、俺に優しく起こすのを期待しないでくれ。 …てか、俺はガキが嫌いなんだよ…うるせぇし、一丁前に大人ぶってんのがうぜぇし… コイツがそうだとは思ってねぇけどな。 まだ眠いのか、蹴られた頭を撫でながら起き上がりクソガキは目を擦りながらこちらを見た。 状況を理解していないのか首を傾げた。 「…王子ヤクザ?」 「はぁ?なんだそりゃ…寝惚けてんじゃねーよ、俺にはクロードっていう名前があるんだよクソガキ」 「……クソガキじゃない、武田(たけだ)霧夜(きりや)」 そういえば自己紹介がまだだったなと思い、今更ながら自己紹介しといた。 聞いてるのか聞いてないのかイマイチ分からないが霧夜は剣だったがもうペンダントに戻ってしまったものを見つめていた。 そのペンダント……何処かで見た事があるな、少し調べる必要がありそうだ。 それにしても今日覚醒したばかりでよく剣を具現化出来たな…素質があるって事だろう。 まさかアイツの言った事が本当だとは…不本意だが認めなくてはならないな。 目の前にいる間抜けなコイツが、本物の指揮者だ。 「夢じゃなかったんだ…」 「残念ながら全て現実だ」 「……全部夢だったら良かったのに」 ペンダントを見つめながら霧夜はそう呟いた。 その声は悲しみに満ちていた。 コイツに何があったんだよ……まぁ、俺には関係ないが… 霧夜は一瞬で涼しい顔に戻った。 ……俺にはコイツの思考回路が分からない。 霧夜は起き上がり、何処かに行こうとする。 「…さて、なんか黒いフードの怪しい男はいなくなったし…帰るか」 「おい、ちょっと待て」 なんか一人で自己解決して帰ろうとするから襟を掴み引き止める。 コイツに逃げられるわけにはいかない…やっと見つけた指揮者なのだから… もし逃したら次は警戒されてしまう、そうなったら捕まえるどころか会う事も避けられる危険がある。 ……拉致してでも連れて帰る! 霧夜は無表情だからいまいち驚いてるか分からないが、必死に暴れている。 俺も羽交い締めをして行かせない。 「わぁぁ!!殺される!!」 「やめろっ!!俺はお前の味方だろうが!!」 「…え?ドコが?」 「真顔で聞くなよ、お前を助けてやっただろ」 「火柱で殺そうとした」 「違う!魔法には魔法しか効かないから闇の力を消すために炎を使ったんだろ!それにお前は指揮者だから魔力を無効化出来るだろ」 「……無理」 はぁ、やっぱり一から教えるしかねぇか…何も知らない人間は面倒くせぇ… 今まで人間の世界で人間として過ごしてきたから当たり前だ。 実物を見た方が早いだろう、こういうタイプは口で言っても分からねぇからな。 俺は霧夜と会話が出来るように羽交い締めを止めてがっしりと腕を掴んだ。 嫌そうな顔をしていたが気にしない。 俺は…俺達はお前が必要なんだよ。 「武田霧夜、今日からお前を奏歌学園で保護する…勿論強制だ」 「…横暴、それに保護するって言われたってまだ中学校もあるし…家族にも言ってない」 「中学ってあと数日で卒業だろ?それに家族には俺が上手く言っとく」 「保護する理由は何?俺を実験動物にする気?」 「こんな訳分からん実験動物いらん!お前を闇の奏歌月種から守るためだ、また襲われないためにもな」 「…闇のトカゲ種?あの人トカゲなの?」 「はぁ、もう何でもいい…ほら行くぞ」 俺は今本気でコイツを指揮者にしたくない思いでいっぱいだった。 分かりやすい思考のアイツの方が扱い易そうだな…いや、後が面倒だからやめとこ。

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