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《逃避行 第Ⅱ章》一瞬の彼方②
「すごい!」
空の中で僕は歓喜した。
横濱の海
煉瓦 の街並み
小さくなっていく
「すごい、すごいよ!昌彦」
青い空と一体になる。
ヒラヒラ揺れる蒼い海
太陽を飲み込んで、波がキランと反射する。
煉瓦倉庫が油絵みたい。
僕、空を飛んでいる!
零戦の小さなコックピット
昌彦が操縦席に座って、僕と湊さんは足元に腰かけた。
街を眺める湊さん、キラキラ目を輝かせて子供になったみたい。
早朝
僕達が訪れたのは、根岸飛行場
滑走路を走り、僕らの銀翼は飛び立った。
「うわー!」
昌彦がわざと機体を傾けたから、頭上の空がちょっと近くなった。
湊さん、悲鳴を上げて、ぎゅって昌彦にしがみついた。
さては昌彦、これが狙いだな。
「零戦、初めてだろ」
にかっと、昌彦が白い歯を見せた。
「あぁ……胸がドキドキしてる」
昌彦の腕にしがみついて、湊さんが息を弾ませた。
「飛行場に忍び込むのも信じられないし、お前どうやって零戦を?」
「俺は不可能を可能にする男だからな」
空を駈けるプロペラ音が心地良い。
「ま、後の事はどうにかなるって」
「ワァっ」
湊さんの文句は全部封じ込めてしまう。
真っ赤な日の丸を描いた主翼が、斜めに傾いた。
今度は海が近くなった。キラキラの波、金砂をまぶしたサファイアみたい。
「楽しめよ、逃避行なんだから」
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