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第Ⅲ章 刻む羽①
機体を不時着させて、小高い丘に登りました。
見下ろした街は、街ではなくなっていました。
色鮮やかな煉瓦倉庫は真っ黒に焼け爛 れて、あちらこちらで煙が上がっています。
魂が空に昇るように……
もうもうと死んだ人の数だけ黒煙が、街を覆い、海まで覆っていました。
アァ、僕は以前にもこんな景色を見ました。
東京
母さんが死んだ街と同じです。
昭和20年 5月29日
横濱は灰になりました
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