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第11話

その夜、マオは部屋に備え付けられているシャワールームから出たところで力尽きた。 髪を乾かさないと明日の朝跳ねてしまいそうだが、主に食事の件で疲れているというのが正直なところだった。 「彰彦様は……何を考えて……いらっしゃるのか……」 ベッドの上にうつ伏せになっているうちに、段々瞼が重くなってくる。 「俺には……マナーなんてないのに……」 明日の夜から、食事の度にマナーの悪さを指摘されたらどうしよう。 マオの食べ方が気に入らないから売りに出そうと思われたら、どうすればいいいのだろう。 そんなことを考えているうちに、瞼がすっかり下りていった。 ここは夢の中だ──。 ふわふわとした浮遊感が、マオにこの空間が現実世界ではないことを知らしめる。 ああ、眼下に見えているのは、多分10歳くらいの俺だ──。 シルクのパジャマを着て、大きなベッドの片隅にうずくまっている。 その部屋に備え付けられた浴室内からは、シャワーを使っている音が聞こえてくる。 『怖い……怖いよ……』 嫌だ、怖いとどんなに喚こうが、その時は必ずやって来る。 ほら、そう思った途端にシャワーの音が止まって、幼いマオはすくみ上がっている。 もうすぐだ。 もうすぐあの男が腰にタオルを巻いた状態で、この部屋へ入ってくる。 マオはシルクのパジャマをゆっくりと脱ぎ始めた。 自分で脱いでおかないと、「めんどくせーんだよ、このガキ!」と蹴られてしまう。 かと言って恐怖に捉われるあまり、俊敏に動くのも無理そうだ。 『早く……脱がないと……』 手が震える。 シルクのパジャマのボタンが外せず、仕方なく頭から脱ぎ、パジャマのズボンも脱ぎ捨てる。 下着はどうしようかといつも迷うが、これも脱いで待っていろというのが、この家のご主人様の命令だ。 マオは覚束ない手付きで素っ裸になると、ベッドの布団を使って自分の身体を隠した。 『待たせたな、ガキ。今日も俺を気持ちよくしてくれよ』 シャワーから出てきたのは、決して若くはないが、かと言って老いてもいない、いわゆる中年の男だった。 顎に髭を蓄え、あのゾリゾリした感触がたまらなく気持ち悪い。 男はマオの身体を覆っていた布団を剥ぎ取ると、自分が腰に巻き付けていたタオルを外し、半勃ちになりつつあるペニスを突き出してきた。 マオはそれに手を添えながら口に咥え、フェラをしてやる。 陰毛が顔にかかって気持ち悪い。 男の体臭が漂ってくるのも、性器から立ち上る独特の精の匂いも、気持ちが悪くて吐きそうになった。

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