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第13話

 翔太が選んだのは、アルファからの一方的な番の解消でもなく、死別による番の解消でもない、第三の道。  ーー優斗と共に生きる。  自分を殺そうとしたほど、優斗への強い愛情を注いでいた兄への罪悪感は拭えない。もし償えるものならば、今すぐにでも償いたい。  しかし、翔太は治也の気持ちに応えられる回答を持ち合わせていなかった。  それ以外にも問題は山積だ。  未成年の、まだ親の加護のもとに生きている高校生が番を持つことは、世間の風習からして良しとされていない。番は性行為の際に、アルファがオメガのうなじを噛むことによって成立するため、不健全性的行為として校則でも禁止されている行為だ。  学校にバレれば、校則違反で停学もしくは退学になるかもしれない。  けれど、自分の身に何が起きても、目の前にいる心優しい運命の番を、必ず幸せにすると、翔太は決心した。  優斗を自宅マンションまで送り届け、その足で帰宅した翔太は、父に優斗と番になったことを包み隠さず伝えた。  リビングのソファーに対面して腰を掛け、父は手を額にやり、ため息を吐いた。 「はぁ…………どうしたものか……」  翔太も治也もどちらも大切な息子だ、と言った父は少しの間考えると、テーブルの引き出しから鍵を取り出し、翔太に差し出した。 「曾祖父さんのこと覚えてるか?」 「……はい」  忘れる訳がない。オメガが道具だと翔太の心に刻んだ張本人。 「亡くなってからは誰も住んでないが、毎月メンテナンスはしている。しばらくはここに住みなさい。お前も治也も今は顔を合わせるのに抵抗があるだろう……」 「ありがとうございます。父さん」  翔太が鍵を受け取ると、父がおもむろに立ち上がる。そして、書斎に行き、分厚い封筒を手にして戻ってきた。 「当面の生活費だ。何か困ったことがあったら、すぐに言いなさい」  封筒の中を覗くと、生活費にしてはかなりの枚数、紙幣が入っていた。 「番は一生切れない契約だ。本来なら相当の覚悟が必要だ。まだ高校生の翔太には荷が重いかもしれない。ただ、これだけは言っておく。優斗くんを大切にしろ。アルファとして、オメガを絶対に不幸にするな。……話は以上だ」 「わかりました」  翔太は深々と頭を下げた。  部屋に戻り、学校生活に必要な勉強道具一式と制服、必要最低限の服や下着などをトランクに詰め込み、自宅を飛び出した。  父も兄も、オメガを大切にする想いは同じだ。自分だけが取り残されているような、重大な何かを知らされていないような、焦燥感に駆られながら、曾祖父の屋敷に向かった。

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