24 / 52

第23話 -優斗編-

 困っていることがあって助けてほしい、と言ってきた女教師に、ついてきた自分を呪った。  椅子に身体を固定され、優斗は女教師を精一杯の鋭い視線で見上げた。 「アルファって特別な力があるでしょ? だから、アルファのフェロモンを出せば、オメガを発情させるのなんて簡単。しかも今年はねー。運良く職員がオメガの発情時の対応してたの。私、周りにベータだと思われてるから、すごく動きやすかったわ。泣きながら私に犯されるオメガ見ると、もうゾクゾクしちゃう」  希少と言われるアルファの中でも、かなり珍しいと言われる、女のアルファだ。  何かの講義を開いているかのように、優斗の前を行き来し、今までの非道な行いに陶酔していた。 「でも番がいるオメガってどうなのかしら、って思ってたところに、あなたがちょうどいたから、私ってばラッキー。ちょっと試してみてもいい?」  なぜこんな辺鄙な場所に位置する数学準備室に連れて来られたか、全て合点がいった。  この女教師は、自分を手込めにしようとしている。  疑問系で尋ねた割には、すぐにアルファのフェロモンが、女の身体から放出された。  吐き気がする。けれど、身体は意思とは関係なく強制的に発情させられる。 「番以外でも反応しちゃうんだ」  せせら笑った女教師を、優斗は睨みつけた。 「ねぇ、五分猶予を与えるから、あなたの番が来るのと、私があなたを犯すのと、どちらが先か賭けをしない?」  翔太は来ない。優斗はそう思った。  さっき見かけた男の子に案内する、と言っていたのを考えると、今は一緒に色んなところを回っている頃だろう。 「番のいるオメガとのセックスも、アルファは気持ちよくなれるのかしら。どう思う?」  精神が破綻している。何を言っても無駄な気がした。しかし、このまま目の前の見ず知らずの女に犯されるのは、納得がいかない。  腕に力を入れ、拘束を解こうとするが、元々筋肉の少ない優斗の細腕では難しかった。 「僕の番は……」  --来ない。絶対に来ない。もし万が一、今現在一人でいたとしても、広い校内、オメガの匂いが届く範囲など、たかが知れている。  助けに来てほしい、それが優斗の本音だ。  しかし、その本音を吐露出来るほど、翔太との距離は縮まっていない。 「あと五秒」  楽しそうにカウントダウンを始める。  施錠されている数学準備室の木製の扉がガタガタと揺れ、外から蹴破られた。 「優斗さん!」  待ち望んでいた、翔太の姿が、そこにあった。

ともだちにシェアしよう!