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第24話
「優斗さん…………無事でよかった……。本当によかった……」
全力で優斗を捜し回ったせいで、息も上がって、全身汗だくだ。
優斗に駆け寄ろうとしたが、すんでのところで物影から邪魔が入った。
「へー。まさか佐久間くんがこの人の番? 面白いもの見ちゃった」
高いヒールで、ゆっくりと翔太の行く手を阻むように、椎名が立ちはだかった。
「貴様……」
奥歯が砕けるかと思うの強い力で、翔太は歯を食いしばった。殴りたい衝動を懸命に抑える。
「然るべき対処をします」
あくまでも冷静に話し合いをしようと、気持ちを落ち着かせる。
「へぇー。学校に何て報告するの? 自分の番が犯されそうになりました、とか? 私も教師を辞めないといけないけど、あなたも番がいることがバレたら退学になるかもね」
翔太の弱味を握って勝ったと言わんばかりに、椎名に悪びれる様子はない。
「私は退学になっても構わない」
自分の身に何が起ころうとも、優斗を必ず幸せにすると決心したあの日から、その想いは一度も揺らいではいない。
「つまんなーい。一学期までは私と同類だったでしょ? アルファ以外はゴミを見るような目で見てたのに、二学期始まって様子が変わったから何でかと思ってたら、ふーん、そういう訳ね」
翔太は言い返す事が出来なかった。ベータやオメガを軽視していたのは事実だ。オメガに至っては、未だアルファの操り人形だという言葉を払拭出来ずにいた。
「翔太くんは、あんたみたいなのと同類じゃない! 一緒にするな!」
椎名の背後から、いつもは穏やかな優斗が、声を荒らげて抗議した。
「オメガのくせに生意気な男!」
椎名が振り返り、優斗を叩こうとして上げた右腕を、翔太が掴んだ。
「私の優斗に、手を出すことは許さない」
いつもの声よりワントーン低い声に、椎名が振り向く。
鬼のような形相で、椎名を睨みつける翔太に、身の危険を感じ、腕を振り解くと椎名は一目散に逃げていった。
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