30 / 52

第29話 -優斗編-

翔太に我が儘を言って、手を焼かせるなんてどうかしている。風呂場へと走っていく後ろ姿を見送り、翔太の匂いが充満する布団の中に潜った。  八歳も年上の自分に、魅力なんてないのに、翔太は飽きもせずに傍にいてくれる。自分以外のオメガの匂いをつけて帰って来たくらい、許してあげないといけないのに。頭の奥底ではそう思っているのに、いつか捨てられてしまうのではないかという恐怖に、勝つことが出来ない。  戻ってきた翔太は、ボディーソープの香りがした。 「優斗さん」  翔太の熱っぽい視線を浴び、その後に続く行為に思いを馳せ瞳を閉じた。  布団へと押し倒されると、啄むような接吻を、何度か受け、ゆっくり舐めとるように、舌が優斗の口内を弄る。歯茎をなぞり、余すところなく舐めとる。 「……ン」  欲情した瞳をうっすらと開くと、余裕のなさそうな翔太と目が合った。 「すぐに……挿れたい」  切羽詰まった声が告げると、優斗から衣服や下着を引きちぎる勢いで脱がせ、翔太も全裸になる。  翔太は硬く反りたつ欲望に避妊具を手早く被せると、すでにトロトロに溶けた優斗の後孔に、それを挿入した。 「イイ……ぁ」  翔太の欲望が中に入ってくる瞬間が、いつも気持ちいい。自分の小さな性器も、腹の上で揺れ、先走りの液を出す。  翔太が緩やかに腰を進めると、その度に中が翔太の欲望を締め付ける。二人、ドロドロに溶け合ってしまったのではないかと勘違いするぐらいに、隙間が埋まっていく感覚に、優斗は身震いした。  何度も交わり、身体も心も翔太に塗り替えられた。 「翔太くん……」  優斗が呟くと、翔太は目を細め、唇を重ねる。  翔太と肌を合わせるのは、発情期の時だけだ。番としての使命を、全うしてくれている。  3ヶ月に一度訪れる発情期は、一週間続く。その間毎日翔太は愛情を注いでくれる。 「んんーーっ!!!!」  翔太の欲望が、最奥の器官の入口まで届いたと同時に優斗が吐精した。中が収縮して、更にその奥まで導く。その中の動きとは逆に、翔太が腰を引いた。 「あ、……ン」  イッている最中に何度も腰を打ち付けられ、甘い声が漏れる。 「やっ、あ……ァ……しょう、……ん」  角度を変えながら、抽挿を繰り返し、最奥の器官にねじ込むように挿入した瞬間、後孔に圧迫感を覚えた。  胎内に温かい感触が広がる。けれど、それは薄い膜を一枚挟んだ温かさで、優斗の胎内に子が宿ることはない。いや、現に避妊具をつけなかった時も、子を宿すことが出来なかった。懐妊率百パーセントの発情期だったにも関わらず、子供が出来なかったことに優斗は落ち込んだ。そして、その事は聞かれないことをいいことに、翔太には何も伝えていない。  十数分続く翔太(アルファ)の射精の間に、首筋に痛みが走った。翔太がキスマークを付けたのだ。  最近気づいたことがある。翔太はとても独占欲が強い。パティシエの服を着て、ギリギリ見える位置に跡を残す。その独占欲を最近の優斗は、心地良く感じ始めていた。

ともだちにシェアしよう!