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第35話

 海が一望できる公園。  優斗が翔太を心配し、駆けつけた思い出の場所だ。夕暮れ時、周りにはちらほらとカップルもいたが、隅のベンチに腰をかけた。  絡まった糸を解くように、丁寧に丁寧にこれまでのことを時間をかけて話をした。  勘違いが重なって、悪い方向に思考が及んでいたが、一つ一つ誤解を解き、今までの溝を埋めるように根気強く優斗の想いと向き合う。 「私が沢圦くんのことを好きだと……」  優斗が思い込んでいた、翔太の好きな人があまりにも意外な人物で、翔太はしばらくの間、声を殺して笑っていた。 「そんなに笑わなくても……」  優斗は自分の勘違いだったことに、安心した。 「私はずっと、アルファ以外は人だと思っていませんでした。きちんとベータやオメガと向き合った経験が今までなかったし、それでいいと思っていた」  いつからだろうか、曾祖父の呪縛から解放されたのは。自然とあの言葉を思い出す回数も減り、最近はほとんど思い出すことすら、なくなっていた。 「……その考えを改めさせてくれたのは、優斗さんでした。あなたの存在が、私の固定観念を少しずつ変えてくれたのです」  じっと翔太を見つめる優斗の双眸を、翔太も見つめ返した。 「あなたと番になれたことを、心から幸せだと感じています」  どちらともなく手を繋ぎ、微笑み合った二人に、他者が入り込む余地など微塵もなかった。 「愛しています。優斗さん」  繋いだ手を持ち上げると、優斗の手の甲に唇を寄せた。

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