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第41話

 外はまだ明るい。  背徳感を感じながら、カーテンを閉め切った寝室で、優斗の潤いのある唇に指を這わす。 「愛しています」  愛という無形のものを、証明するにはどうしたらよいのだろうか。そんな疑問を抱えながら、優斗の唇にゆっくりと翔太は唇を重ね合わせた。柔らかい唇を啄みながら、優斗の服に手をかけた時、インターホンが鳴った。  それを無視して優斗の服を捲り上げ、胸に舌を這わせると、今度は二回連続でインターホンが鳴った。  訪問してきた人物は、どうやら急いでいるのか、はたまたせっかちな性格のようだ。 「誰でしょう、こんな時に」  ため息を吐くと名残惜しそうに優斗から離れ、玄関まで長い脚で大股で移動する。どちら様ですか、と扉越しに声を掛けた。 「あの……秀英高校の有馬(ありま)純也(じゅんや)と申します。佐久間……翔太さんはご在宅でしょうか?」  緊張しているのか、声が震えていた。  有馬は風紀委員長を務める二年生だ。特に親しいわけでもない、学年も違う有馬がわざわざ訪ねて来たことに、眉間に皺を寄せた。  玄関の鍵を外すと、引き戸の扉を開ける。  そこには、涙をいっぱいに溜めた有馬が、佇んでいた。先ほどの声の震えは、泣くのを我慢していたからだ。制服のワイシャツは無残に破け、そこから覗く腕には血が滲んでいた。  華奢な身体に、生まれつきだという色素の薄い髪。アルファだと言われなければ、オメガだと勘違いする者も多い容姿だ。 「とりあえず中に」  急いで有馬を中に入れると、翔太は外の様子を窺い、異常がないことを確認すると、玄関を施錠した。 「すみません……いきなり押しかけて……」 「話はあとで。とりあえず手当てを。救急箱を取ってきます。ちょっと待っていてください」  急ぎ足で居間へ戻ると、居間の片隅に置かれた箪笥から優斗が救急箱を取り出していた。 「優斗さん……」 「はい。救急箱。やり取りが聞こえてきたから」  救急箱を受け取ると、急いで玄関に向かった。こういう時は、手先が器用な優斗に対処してもらうのが本当は正しい選択だ。しかし、有馬はアルファで、アルファの目にオメガの優斗を晒したくない一心で、翔太自身が有馬の手当てをすることにした。 「この傷は、誰にやられたんですか……」 「これは……一年の……ほ」  おずおずと有馬が口を開こうとしたその時、玄関を激しく叩く音がした。  あまりの力強さに老朽化している玄関扉がガタガタと音を立てる。 「有馬先輩! いるんでしょ!? 出てきてください!」  どうやら、有馬に傷を付けた犯人は、のこのこと翔太の前に現れたようだった。有馬の手当てを終えると、少しここで待っていてくださいと言い残し、玄関を開けた。

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