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第49話

「優斗くんは、お前の一大事に何をやってるんだ」  漸く翔太が自宅に足を運んだのは、謹慎処分を受けてから三日後だった。優斗は仕事が忙しく一緒に行く時間が取れない、と嘘を吐き、日程をずらしてもらった挙げ句、結局一人で来る羽目になった。 「お前には悪いが、優斗くんの勤務先に電話させてもらった。もう三日も無断欠勤をしているらしいじゃないか」  翔太が嘘を吐いていたことも、父親には既にバレていた。  気まずい空気がリビングに流れた。 「優斗くんを大切にしろとは言った……。しかし、それは誤りだったかもしれない。今のこの有様は何だ……。お前に嘘まで吐かせて……」 「居場所はわかりません……。でも、誰と一緒にいるかは分かっています。優斗さんにとっては家族のような存在の人です」  父親は無言だった。十分すぎる沈黙のあと、重い口を開いた。 「つい最近報道されていた番解消の新薬が実用化されたら、優斗くんにはそれを服用してもらおう」  決定事項の文面を読み上げるように、父親の声は留守電の時とは違い、とても冷ややかだった。 「待ってください! 父さん!」  ソファーから立ち上がり、抗議をするが、父親は首を振る。 「翔太との番が解消されたら、治也の番になってもらう。」 「そんな……」 「実の兄弟が仲違いしたままなのを、これ以上父親として放置しておくわけにもいかない。治也もあれ以来恋人も作らない。治也にとって優斗くんは唯一無二の存在だったんだ」  父親は優斗と治也の関係が、修復できない状態だということを知らない。  もし優斗が新薬で翔太との番を解消しても、治也の元へ帰ることはないだろう。 「高校には番を解消する旨連絡して、退学処分は反故にしてもらう」 「父さん!! 勝手に決めないでください! 私は何も納得していません!」  学校へ電話をしようとソファーを立った父親の行く手を阻む。 「……それなら、何か他に良い案が翔太にはあるのか? 残された時間は僅かだ」  翔太が絶句したのと同時刻、結城紘一は母校の校長室へと赴いていた。

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