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第9話(R18)
「それから、あんなところに……」
亘理はそこまで、口にし、夢の続きを思い出すと、かぁと全身の温度が上がるのを感じた。
あんなところ。それは白亜のような亘理の身体の部分で1、2を争う程、色の白い陰嚢のつけ根の部分だった。その箇所を黒木の指が亘理をくすぐるようになぞり、それが終わると、黒木の指は円形にひしゃげたような先端をしたごつい器具に取って変えられる。
電気マッサージ。いわゆる、電マだった。
「ああ……あぁァ!」
電気といっても、微弱なものだが、受けている箇所が箇所なだけに亘理は強い刺激を受ける。
普通に振舞えなくて、啼くように声を上げるのが我慢できなかった。肉が薄く、骨盤の浮き上がった腰が揺れるのも止められなかった。
そんな亘理に黒木はさらに、電マを亘理の陰嚢の辺りに押し当てて、その先端にある亀頭を揉みしだいていた。その縦に割れた尿道口が横へ広がろうとする事で視神経が引っ張られ、涙道がじわりと熱くなるような感覚を亘理は受け続けた。
「やぁ……いやだぁ……」
左胸の辺りがきつく締めつけられ、心臓全体がどくどくと逸るような感覚も夢の割に、妙にリアルだった。亘理は再び、布団に身体をきつく巻きつけるようにして眠るしかなかった。
「彼が悪い、って訳じゃないんだけど」
翌朝、亘理はあまり食欲もなかったが、昨日の残り物や買い置きのチーズで朝食を済ませ、頭を悩ませていた。
頭を悩ませているのは、昨日、出された教養科目のレポートではない。亘理も口にしていた通り、彼……黒木の事だった。
「勝手だよな……。変な夢を見たのはこっちなのに、どんな顔をして良いか分からないから行かないなんて」
確かに、黒木は恐いところもあるし、簡単に深入りしてはいけないと思うような雰囲気もある。しかし、義理堅く、真面目な人物だと亘理は思う。
あと、深入りしてはいけないとは思うのだけど、彼が纏っている孤独な感じや人に対して一線を引いている感じも気になる。
「それに」
それに、美容師としての黒木の腕は良い。
丁寧かつ、スピーディな技術。それに、亘理が最も買っている切った後のイメージを大きく変えないカット。
あの時の事があやふやな亘理も黒木を本物の美容師だと思う。あれほどの美容師にはこの先、会えない気もする。
「まぁ、結局のところ、また来るって言っちゃった訳だし」
亘理はまたいつものように洗面台の前に立って、歯ブラシで強めに口の中を掃除する。掃除した後、顔を洗うと、大丈夫だという風に鏡へ向かってにこっと笑ってみた。
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