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第18話

「到着いたしました」  黒塗りの車はそんな言葉で停まる。  停まった先はどこかのビルの階下にある駐車所のようだった。停まっている車はそれほど多くはなかったが、車に疎い亘理が一目見ただけで高級車だと分かる。中にはディープブルーをした珍しいフェラーリや生産期間1年と言われた幻のポルシェなどもあり、平凡な学生である亘理の場違いさが際立っていた。  亘理は車から降ろされると、そのまま、亘理と共に車に乗っていた黒服の男の案内に続く。 「ボスはここの最上階にいます」  駐車場からエレベーターホールに入る3人。  エレベーターは全部で4機あり、左手の手前の1機は常に最上階へ直通らしい。  亘理と黒服の男2人がその機に乗ると、エレベーターは耳を澄まさないと聞こえないほどの静かな音を立てて、動き出した。  50階ほどを一気に上がるエレベーターに身体が浮き上がるような感覚を感じ、場には不釣合いな爽快さを亘理は感じる。  いや、それだけではない。よく見ると、扉のある面以外が明るく、限りなく透明に近い高純度のエメラルド・グリーンのガラス張りも綺麗だ。  しかし、50階のフロアはその美しさをはるかに凌いでいる、と亘理は思った。 「あ……」  亘理が思わず声を上げた、フロアの床も薄い琥珀色のガラス製で、燃えるようなサラマンダーのカーペットが広がっている。その中心には甕のように大きな花瓶にこれでもかというほど白や暖色の花々が活けられている。  まるで、鳳凰が羽ばたいているような活け方や花の色の感じなどから中華っぽいな、と亘理は感じた。 「亘理様、少々、お待ちを」 「あ、はい」  黒服の男達の足がカーペットを歩いていた音と同時に止まり、そのうちの1人がノックと共に扉の向こうへと消えていった。  ただ、すぐにその男は亘理の目の前に現れて、今度は亘理が黒服の男達に背を向けて、扉の取っ手を押した。

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