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「川神の言いたいことは分かる。俺に務まるのかと思っているんだろ?」
やっとパフェから視線を俺に向けた高梨さんが、探るような目を向けてくる。
もちろん図星ではあった。言葉数の足りない高梨さんが、子供相手にきちんと会話が出来るのか疑わしいところだ。
「いえ……そうじゃないですけど……」
嘘でも俺は慌てて首を横に振った。一応、高梨さんが上司であることには変わりない。
「お腹も満たされたし、りょーすけ続きしましょ」
美織ちゃんがイスから降りると、雑然と並べられた人形とティーセットのところへ行ってしまう。
「えっ……」
高梨さんはまだ食べ終えてないパフェと、美織ちゃんを見比べている。
そのなんとも言えない表情に「良いです。俺が相手しますから」と自ら買って出る。
「すまない」
そう言いつつも、ちゃっかり美織ちゃんの残したパフェを高梨さんの方に引き寄せているのを俺は見逃さなかった。
そんなお茶目な姿を見れた俺は、顔がデレデレになってしまう。思わず抱きつきたくなる気持ちを必死で押さえ込む。
「川神! 執事の癖に顔がだらしない! クビにするわよ!」
美織ちゃんの激に慌てて俺は、執事へと変貌を遂げた。
「せっかく来てもらったのに悪かったな」
高梨さんが苦い顔で謝ってくる。
「良いんです。お役に立てたなら何よりです」
気づけばすでに夜の九時を過ぎていた。美織ちゃんの相手をした後、夕飯を食べさせて寝かしつけまでした。
俺の姉は今年、六歳になる子供がいて、実家に戻ると俺は子守を任されることもあった。そのせいか、子供の扱いは慣れてはいる。
子供の相手は嫌いじゃないが、さすがに疲れていた。それに、高梨さんと二人っきりで食べながら「美味しいですか? 美味しいですよね?」とクドいぐらいに聞いて本音を聞き出したかった。
残念だったが、こんな時間まで高梨さんの部屋にいれたのだから良しとしよう。
玄関まで高梨さんに見送られ、俺は部屋を後にした。
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